【Tour速報】北の地獄! 雨天となった石畳のツール第5ステージでオランダのボームが区間初優勝/フルーム棄権
第101回ツール・ド・フランス(UCIワールドツアー)は、7月9日にベルギーのイープルからフランスのアランベール(ポルト・デュ・エノー)までの152.5kmで第5ステージを競い、『ミニ・パリ~ルーベ』と呼ばれた悪天候の石畳を制してオランダのラルス・ボーム(ベルキン)がツール区間初優勝した。
誰も予想しなかったことに、マイヨ・ジョーヌのビンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ)は、チームメートのヤコブ・フグルサン(アスタナ)に守られてボームよりたった19秒遅れの区間3位でゴール。彼は総合首位の座を守っただけでなく、最大のライバルであるアルベルト・コンタドール(ティンコフ・サクソ)に、ここで2分半のタイム差を付けることに成功した。
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第5ステージでは、ディフェンディングチャンピオンでゼッケン1を付けた英国のクリストファー・フルーム(スカイ)が、序盤に雨天のなか、2度落車してしまった。
29km地点で最初に落車したときには、4人のチームメートにサポートされて集団に復帰したが、85km地点でふたたび落車すると、そのままチームカーに乗り込み、レースを棄権してしまった。
フルームは前日にも落車し、左手首を負傷した状態で第5ステージをスタートしていた。総合2連覇を狙っていた彼のツールは、たった5日で幕を下ろした。
第5ステージは予報通りの悪天候になり、主催者は安全を優先してスタート前にコースの短縮を決定。後半に9ヶ所あった石畳区間のうち、7番と5番をキャンセルした。これで総距離は3km短縮した。
北のクラシックレースのような雨と風と寒さのなか、ベルギーのイープルを194選手がスタート。フィリップ国王やイープル出身のY・ルテルム元首相が出席した。
スタートしてすぐに9人の選手がアタックし、逃げグループを形成した。そのなかにはニーバリをアシストするリューウェ・ウエストラ(アスタナ)も入っていた。
ウエストラはスタート前に「チームのプレッシャーを取り除くために、逃げに入るつもりだ。ナーバスでウエットなステージだ。ボクたちはみんな、ニーバリのために150%働いている。このツール中、ずっとさ」と、話していた。
この日はロータリーを通過するたびに誰かが濡れた路面で転倒していたと言われるほど落車が続出。先頭グループでもハニエル・アセベド(ガーミン・シャープ)とトニー・マルティン(オメガファルマ・クイックステップ)が落車した。
アセベトは集団に戻ったが、マルティンは42km地点で逃げに合流できた。雨天にもかかわらず、最初の1時間の平均時速は49.2km/hだった。
国境を越えてフランスへと戻った時点で、逃げグループは集団に2分43秒差を付けていた。しかし、87km地点から始まったカルフール・ド・ラルブルの最初の石畳セクションに到着したときには、その差は2分に縮まっていた。
集団はカルフール・ド・ラルブルでバラバラになり、アンドリュー・タランスキー(ガーミン・シャープ)、ピエール・ロラン(ヨーロッパカー)、フランク・シュレク(トレック)が遅れてしまった。
アルカンシエルのルイ・コスタ(ランプレ・メリダ)も一度遅れたが、すぐにマイヨ・ジョーヌ集団に追い付くことができた。2時間が過ぎても、平均時速は47.8km/hもあった。
97km地点の中間スプリントポイントは、ニーバリをアシストするウエストラが先頭で通過。マイヨ・ジョーヌ集団は、マイヨ・ベールのペーテル・サガン(キャノンデール)が最初に通過した。
2つ目に通過した8番の石畳セクションで、マイヨ・ジョーヌ集団からコンタドールが脱落。ゴールまで残り45km地点で30秒遅れてしまった。マイヨ・ジョーヌ集団は28人に減り、逃げとの差は1分を切った。
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残り35kmでマイヨ・ジョーヌ集団からボームとセプ・バンマルクのベルキン勢がアタックして先行。先頭ではウエストラがニーバリを待つために脱落した。これでアスタナはニーバリ、フグルサン、ウエストラの3人になり、5km後にはボームとバンマルクをとらえた。
そして25km地点では逃げも捕らえ、マイヨ・ジョーヌ集団の15人が先頭に立った。その時点で、コンタドールはすでに1分以上後方にいた。
残り22km地点でボームが2度目のアタックを試みたが、2km後には吸収された。残り10kmで、先頭はアスタナの3人とボーム、サガン、マイヨ・アポワのシリル・ルモワン(コフィディス)、イェンス・ククレール(オリカ・グリーンエッジ)、ファビアン・カンチェッラーラ(トレック)の8人になっていた。
そこからマイヨ・ジョーヌのニーバリがアタックし、ついて行けたのはアシストのフグルサンとボームだけだった。そして最後の石畳セクションに3人で突入。残り6kmで、ついにボームがアスタナを振り切ることに成功し、独走を開始した。
ボームはゴール手前で振り返り、勝利を確信するとガッツポーズで喜びを噛みしめた。そしてクラシックレースのような死闘になったステージ勝者となった。
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■ボームのコメント「長年ボクは雨のパリ~ルーベを夢見ていた。今日はツール・ド・フランスで、望んていたものを手に入れたんだ。オランダ人が区間優勝したのも9年ぶりだったから、とてもとても特別だ。ボクにとって最高に素晴らしい勝利だ。今朝、天気を見た時、ボクはちょっとニンマリした。一日中リラックスしていて、自信を持っていたのさ」
■石畳区間で総合争いのライバルたちにタイム差をつけることに成功したマイヨ・ジョーヌのニーバリ「今日のステージの結果を本当ら喜んでいる。本当にストレスに満ちた日で、とても厳しいステージだった。ボクはマイヨ・ジョーヌのことは考えなかった。出来る限りベストな走りをすることに集中していた」
「この特別なステージのために準備はしていたが、今日のコンディションは、ボクがここの石畳に来て走った時に経験したのとはまったくちがっていた。ジロ・デ・イタリアで“ストラーデ・ビアンケ”を走ったのとも、まったくちがう感覚だったよ」
「今日、コンタドールにそんなにたくさんのタイム差を付けらるとは思っていなかった。でも、ボクは調子に乗らないだろう。ボクは落ち着いたままでいたい。道程は長く、山岳もたくさんある。落車は誰にでも起きることは、今日見たとおりさ」
7月10日はアラスからランスまでの194kmで、平坦な第6ステージが行われる。今日は落車が相次いたが、意外にも途中リタイアしたのはフルーム1人だった。しかし、明日になると今日の落車の影響が出る選手はいるかもしれない。
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■第5ステージ結果[7月9日/イープル~アランベール ポルト・デュ・エノー■/152.5km]
1 ラルス・ボーム(ベルキン/オランダ)3時間18分35秒
2 ヤコブ・フグルサン(アスタナ/デンマーク)+19秒
3 ビンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ/イタリア)+19秒
4 ペーテル・サガン(キャノンデール/スロバキア)+1分01秒
5 ファビアン・カンチェッラーラ(トレック/スイス)+1分01秒
6 イェンス・ククレール(オリカ・グリーンエッジ/ベルギー)+1分01秒
7 ミハウ・クウィアトコウスキー(オメガファルマ・クイックステップ/ポーランド)+1分07秒
8 リューウェ・ウエストラ(アスタナ/オランダ)+1分09秒
9 マッテーオ・トレンティン(オメガファルマ・クイックステップ/イタリア)+1分21秒
10 シリル・ルモワン(コフィディス/フランス)+1分45秒
16 ユルフン・バンデンブルック(ロット・ベリソル/ベルギー)+2分02秒
18 トニ・ガロパン(ロット・ベリソル/フランス)+2分02秒
20 リッチー・ポート(スカイ/オーストラリア)+2分11秒
22 アンドリュー・タランスキー(ガーミン・シャープ/米国)+2分22秒
26 アレハンドロ・バルベルデ(モビスター/スペイン)+2分28秒
27 ロマン・バルデ(AG2R/フランス)+2分28秒
31 ティージェイ・バンガルデレン(BMC/米国)+2分28秒
34 バウケ・モレマ(ベルキン/オランダ)+2分44秒
37 アルベルト・コンタドール(ティンコフ・サクソ/スペイン)+2分54秒
175 新城幸也(ヨーロッパカー/日本)+22分40秒
■第5ステージまでの総合成績
1 ビンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ/イタリア)20時間26分46秒
2 ヤコブ・フグルサン(アスタナ/デンマーク)+2秒
3 ペーテル・サガン(キャノンデール/スロバキア)+44秒
4 ミハウ・クウィアトコウスキー(オメガファルマ・クイックステップ/ポーランド)+50秒
5 ファビアン・カンチェッラーラ(トレック/スイス)+1分17秒
6 ユルフン・バンデンブルック(ロット・ベリソル/ベルギー)+1分45秒
7 トニ・ガロパン(ロット・ベリソル/フランス)+1分45秒
8 リッチー・ポート(スカイ/オーストラリア)+1分54秒
9 アンドリュー・タランスキー(ガーミン・シャープ/米国)+2分05秒
10 アレハンドロ・バルベルデ(モビスター/スペイン)+2分11秒
11 ロマン・バルデ(AG2R/フランス)+2分11秒
12 ティージェイ・バンガルデレン(BMC/米国)+2分11秒
18 バウケ・モレマ(ベルキン/オランダ)+2分27秒
19 アルベルト・コンタドール(ティンコフ・サクソ/スペイン)+2分37秒
133 新城幸也(ヨーロッパカー/日本)+30分59秒
[各賞]
■マイヨ・ベール:ペーテル・サガン(キャノンデール/スロバキア)
■マイヨ・アポワ:シリル・ルモワン(コフィディス/フランス)
■マイヨ・ブラン:ペーテル・サガン(キャノンデール/スロバキア)
*第6ステージはミハウ・クウィアトコウスキー(オメガファルマ・クイックステップ/ポーランド)が着用
■チーム成績 :アスタナ(カザフスタン)
■今日の敢闘賞 :リューウェ・ウエストラ(アスタナ/オランダ)(http://www.letour.fr/)