【Tour速報】アルプス山岳初日でマイヨ・ジョーヌのニーバリが圧勝! スカイのポートが総合争いから脱落
第101回ツール・ド・フランス(UCIワールドツアー)は、7月18日にサンテチェンヌからカテゴリー超級のシャンルース峠頂上までの197.5kmでアルプス山岳初日の第13ステージを競い、マイヨ・ジョーヌを着たイタリアチャンピオンのビンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ)が圧勝した。
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この日は残り12.5kmのシャンルース峠の上り坂で、マイヨ・ジョーヌ集団から総合2位に付けていたオーストラリアのリッチー・ポート(スカイ)が脱落。チームメートのミケル・ニエベ(スカイ)が付き添ったが、9分近く遅れてゴールした。
ポートは総合16位まで転落し、総合2位にはアレハンドロ・バルベルデ(モビスター)、総合3位にはマイヨ・ブランを着ている地元フランスのロマン・バルデ(AG2R)が浮上した。
アルプス初日は猛暑に見舞われた。優勝したニーバリもインタビューで「気温は40度Cあったと思う」と、語っていたほどだ。
前日に起きたマレーシア航空機の墜落事故は、アムステルダム発でオランダ人の乗客が大勢乗っていたこともあり、オランダのベルキンチームは喪章を付けてレースに参加した。
この日は、1983年にマイヨ・ジョーヌを着用し、7月11日に他界したジャンルイ・ゴチエ氏の葬儀の日でもあり、スタート前には1分間の黙祷も行われた。
サンテチェンヌは177選手がスタート。11km地点で逃げ出したグループには、アレッサンドロ・デマルキ(キャノンデール)、ジョバンニ・ビスコンティ(モビスター)、ブレル・カドリ(AG2R)が含まれていた。集団は早くからロシアのカチューシャがコントロールしていた。
最初のクロワ・デ・モンビュー(カテゴリー4)で、ヤン・バークランツ(オメガファルマ・クイックステップ)とルディ・モラール(コフィディス)が集団からアタックし、先頭の逃げを追った。
41km地点でバークランツらが合流し、先頭の逃げは9人になった。10km先でカチューシャがコントロールを続ける集団との差は3分15秒にまで開いた。
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集団の後方では、序盤から遅れていたアルチュール・ビショー(FDJ.fr)がレースを続けられず、フランス人のリタイア第一号になってしまった。彼は2日前から気管支炎を患ってしまっていた。
この日はリタイアが続き、ダニエル・ナバロ(コフィディス)とハニエル・アセベド(ガーミン・シャープ)もコース半ばでレースを去った。
逃げは最大で5分近くのタイム差を付けたが、集団では強い横風にもかかわらずカチューシャが働き続け、コース後半にそびえていたパラキ峠(カテゴリー1)のふもとでは1分10秒にまで縮まっていた。
逃げ集団は、パラキ峠の登坂がスタートすると、バークランツとカドリが先行したが、すぐにデマルキが追いつき、ゴールまで57km地点から独走を開始した。彼は今年のクリテリウム・デュ・ドーフィネで山岳賞を獲得した選手だ。
ゴールまで残り45.5kmのパラキ峠山頂はデマルキがバークランツに1分近いタイム差を付けて通過。集団は3分近く遅れて通過し、ホアキン・ロドリゲス(カチューシャ)が2ポイントを獲得した。
パラキ峠の下り坂では、マイヨ・ジョーヌのニーバリをアシストするヤコブ・フグルサン(アスタナ)が転倒する事故が発生した。集団はニーバリのリクエストでスピードを落としたため、パラキ峠を下りきった残り28km地点にあった中間スプリントポイントで、先頭のデマルキとのタイム差は3分40秒になっていた。
残り18kmで、この日のゴールがあるカテゴリー超級のシャンルース峠をデマルキは独走で上り始めた。マイヨ・ジョーヌ集団はジョン・ガドレを先頭としたモビスター勢が先頭を固めていた。
デマルキはゴールまで15.5kmを残して集団に捕まってしまったが、この日の敢闘賞を獲得できた。マイヨ・ジョーヌ集団はニーバリに唯一残されたアシストだったタネル・カンゲルト(アスタナ)が引き、残り12.5kmでポートが脱落。先頭は20人ほどに絞りこまれた。
そこで最初に仕掛けたのは、地元フランスのティボー・ピノ(FDJ.fr)だった。総合上位のピノはすぐに捕まってしまったが、続いてアタックしたレオポルド・ケーニヒ(ネットアップ・エンデューラ)は、まんまと抜け出すことに成功した。
先頭のケーニヒには、すぐにラファウ・マイカ(ティンコフ・サクソ)が合流した。後方ではニーバリも加速し、バルベルデ、ピノ、ローレンス・テンダム(ベルキン)と追走グループを作った。ゴールまで残り10kmで、マイヨ・ブランのバルデは第3グループで前を追う形になってしまった。
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ゴールまで9kmを切り、ニーバリがアタックすると他の3人は付いていくことができなかった。マイヨ・ジョーヌはあっという間に10数秒のタイム差を取り返し、先頭のケーニヒとマイカに追いついてしまった。
そして残り3.3kmで先頭からニーバリが加速し、2人を置き去りにして独走を開始した。ケーニヒとマイカには、『メッシーナのシャーク』に対抗できる脚はなかった。
その後方では、34歳のバルベルデが24歳のピノとパリの表彰台争いを繰り広げていた。そしてピノとマイヨ・ブランを争うバルデは、ティージェイ・バンガルデレン(BMC)とともに後続集団から抜け出し、その争いから脱落しないように闘っていた。
結局ニーバリは、後続に10秒差を付けて単独でシャンルース頂上のゴールラインを通過した。ゴール後のインタビューで、この日はイタリアの偉大なカンピオーネ、ジーノ・バルタリの生誕100年の記念日であることを言及されたニーバリは「今日はファビオ・カザルテッリの命日でもあったんだ」と、静かに語っていた。
カテゴリー超級ゴールを制したニーバリは、この日山岳賞でもトップに立った。チームの働きも虚しくマイヨ・アポワを失ってしまったロドリゲスは、アシストのアレクサンダー・ポルセフ(カチューシャ)もタイムオーバーで失ってしまった。
■マイヨ・ジョーヌを着て区間優勝したニーバリのコメント「今日は暑さのせいでとても苦しめられた。ボクはライバルたちをよく見ていた。ボクの目的は、ただ最後の上りでコントロールすることだった」
「しかし、ポートが、おそらくは暑さのせいだと思うが、トラブルに見舞われたのを見たとき、目標はバルベルデに対して重要なタイム差を付けることに変わった。総合成績で彼に差を付けたかったんだ」
7月19日は、グルノーブルからリズールまでの177kmで、アルプス山岳2日目の第14ステージが行われる。途中標高2058メートルでカテゴリー1のロータレ峠と、標高2360メートルで今大会最高峰のイゾアール峠を越え、標高1855メートルでカテゴリー1のリズール峠頂上にゴールする過酷なステージだ。
しかし、アルプス山岳での闘いはこの日が最後となり、20日はカテゴリー付けされた上りがないステージになっている。
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■第13ステージ結果[7月18日/サンテチェンヌ~シャンルース▲▲▲/197.5km]
1 ビンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ/イタリア)5時間12分29秒
2 ラファウ・マイカ(ティンコフ・サクソ/ポーランド)+10秒
3 レオポルド・ケーニヒ(ネットアップ・エンデューラ/チェコ)+11秒
4 アレハンドロ・バルベルデ(モビスター/スペイン)+50秒
5 ティボー・ピノ(FDJ.fr/フランス)+53秒
6 ティージェイ・バンガルデレン(BMC/米国)+1分23秒
7 ロマン・バルデ(AG2R/フランス)+1分23秒
8 ローレンス・テンダム(ベルキン/オランダ)+1分36秒
9 ジャンクリストフ・ペロー(AG2R/フランス)+2分09秒
10 フランク・シュレク(トレック/ルクセンブルク)+2分09秒
12 ユルフン・バンデンブルック(ロット・ベリソル/ベルギー)+2分09秒
13 バウケ・モレマ(ベルキン/オランダ)+2分09秒
27 リッチー・ポート(スカイ/オーストラリア)+8分48秒
44 新城幸也(ヨーロッパカー/日本)+19分35秒
■第13ステージまでの総合成績
1 ビンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ/イタリア)56時間44分03秒
2 アレハンドロ・バルベルデ(モビスター/スペイン)+3分37秒
3 ロマン・バルデ(AG2R/フランス)+4分24秒
4 ティボー・ピノ(FDJ.fr/フランス)+4分40秒
5 ティージェイ・バンガルデレン(BMC/米国)+5分19秒
6 ジャンクリストフ・ペロー(AG2R/フランス)+6分06秒
7 バウケ・モレマ(ベルキン/オランダ)+6分17秒
8 ユルフン・バンデンブルック(ロット・ベリソル/ベルギー)+6分27秒
9 ルイ・コスタ(ランプレ・メリダ/ポルトガル)+8分35秒
10 レオポルド・ケーニヒ(ネットアップ・エンデューラ/チェコ)+8分36秒
11 ミハウ・クウィアトコウスキー(オメガファルマ・クイックステップ/ポーランド)+8分51秒
12 ローレンス・テンダム(ベルキン/オランダ)+9分18秒
16 リッチー・ポート(スカイ/オーストラリア)+11分11秒
73 新城幸也(ヨーロッパカー/日本)+1時間47分51秒
[各賞]
■マイヨ・ベール:ペーテル・サガン(キャノンデール/スロバキア)
■マイヨ・アポワ:ビンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ/イタリア)
※第14ステージはホアキン・ロドリゲス(カチューシャ/スペイン)が着用
■マイヨ・ブラン:ロマン・バルデ(AG2R/フランス)
■チーム成績 :AG2R・ラモンディアル(フランス)
■今日の敢闘賞 :アレッサンドロ・デマルキ(キャノンデール/イタリア)