【Tour速報】悪天候の頂上ゴールでカドリが区間初優勝し、今大会フランスに初の勝利をもたらした!
第101回ツール・ド・フランス(UCIワールドツアー)は、7月12日にトンブレーヌからジェラールメールのラ・モーズレーヌ峠までの161kmで、今年最初の頂上ゴールだった第8ステージを競い、地元フランスのブレル・カドリ(AG2R)が逃げ切って区間初優勝を果たした。
マイヨ・ジョーヌのビンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ)は、アルベルト・コンタドール(ティンコフ・サクソ)の攻撃にも落ち着いて対応し、総合首位の座を守った。
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第8ステージはスイスのマティアス・フランク(IAM)が出走しなかった。彼は前日にゴールまで1kmの落車に巻き込まれ、左大腿骨を骨折してしまった。これで参加選手は185人になった。
この日はアタックがなかなか決まらなかったが、23km地点で地元フランスのシルバン・シャバネル(IAM)が逃げ出すことに成功した。
集団はこの動きで一時3つに分断。前日落車したアンドリュー・タランスキー(ガーミン・シャープ)やトーマ・ボークレール(ヨーロッパカー)が遅れる場面もあった。
オランダのニキ・テルプストラ(オメガファルマ・クイックステップ)が最初に先頭のシャバネルに追いつき、サイモン・イエーツ(オリカ・グリーンエッジ)もつづいた。
さらに集団からカドリがアタックすると、アドリアン・プティ(コフィディス)がマーク。イエーツ、カドリ、プティの3人は41.5km地点でシャバネルとテルプストラに追いつき、先頭は5人になった。その時点で集団とのタイム差は3分40秒に開いていた。
追い風の影響もあり、この日は最初の1時間の平均時速が51.2km/hになっていた。
総合成績でもっとも上位のシャバネルでも26分以上遅れていたため、この逃げはアスタナがコントロールする集団に容認され、ゴールまで残り60kmで11分もの差を付けてしまった。集団ではバルト・ドクレルク(ロット・ベリソル)が棄権した。
終盤は行く手に暗雲が立ち込めていた。ゴールの峠では、早くから雨が降っていた。残り50kmになると、逃げる5人の行く手を阻むかのような土砂降りになった。
悪天候にもかかわらず、集団はカチューシャが前に出て追撃を開始し、逃げる5人とのタイム差は次第に縮まっていった。ゴールまで残り26kmで、この日最初のクロワ・デ・モワナ峠(カテゴリー2)に逃げる5人が到着したとき、集団とのタイム差は6分20秒だった。
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クロワ・デ・モワナ峠の登坂が始まるとすぐに、シャバネルがアタック。ついて行けたのはカドリだけだった。集団はティンコフ・サクソのネオンイエロー列車が先頭に出て登坂を開始した。
先頭では23km地点でシャバネルが脱落し、カドリの独走になった。山頂まで残り1kmで、シャバネルはカドリより37秒遅れ、集団は4分半後方だった。
マイヨ・ジョーヌ集団は、ラファウ・マイカ(ティンコフ・サクソ)が引き続け、マイヨ・ブランを着たミハウ・クウィアトコウスキー(オメガファルマ・クイックステップ)が早々に脱落してしまった。
ゴールまで12kmを切り、2つ目のグロス・ピエール峠(カテゴリー2)では一時小止みになっていた雨脚がふたたび強くなり、カドリは苦しそうな表情で走り続けていた。しかし、集団とのタイム差はまだ4分以上あった。
グロス・ピエール峠の下りでは落車が発生し、またタランスキーが巻き込まれてしまった。負傷した様子はなかったが、自転車にトラブルがあり、彼はすぐにレースに戻ることができなかった。
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2km近くつづくゴールのラ・モーズレーヌ峠に入ったとき、マイケル・ロジャース(ティンコフ・サクソ)が引くマイヨ・ジョーヌ集団とカドリのタイム差は3分以上あった。カドリはフラム・ルージュでチームカーの監督と握手を交わすと、最後の登坂を続けた。
カドリがグランツール初区間優勝の喜びを噛み締め、フランスが今大会での区間初優勝に沸いている間、マイヨ・ジョーヌ集団では総合争いのはげしい闘いが始まっていた。
残り1kmでアタックしたコンタドールを、マイヨ・ジョーヌのニーバリはしっかりマークして付いて行った。この2人の攻防に加われる選手は他にはいなかった。クリストファー・フルームに変わってスカイのエースになったリッチー・ポートが、かろうじて後方を走っていた。
2人のにらみ合いはフィニッシュラインまで続くのかと思われたが、残り100メートルでニーバリが遅れ、コンタドールはたった3秒だけ先行してゴールすることができた。彼はこの日、総合16位から6位へと浮上している。
この日、カテゴリー2の峠2ヶ所とカテゴリー3のゴールでポイントを獲得したカドリは山岳賞でもトップに立ち、敢闘賞も獲得した。第9ステージは、マイヨ・アポワに赤ゼッケンを付けて参加することになる。
■区間優勝したカドリのコメント「ボクたちは逃げを捕まえるのにものすごく闘った。それは40kmの苦労だった。道すがら、ボクが恐れていたのはシャバネルとテルプストラだった。彼らがアタックするのはわかっていた。だからシャバネルが加速したとき、ボクはすぐに付いて行ったんだ。準備はできていたのさ」
「シャバネルがそんなに強くないのがわかったから、ボクは1人で行った。イエーツが戻ってくるのを避けたかったんだ。彼はボクよりもずっと優れたクライマーだからだ。もしボクがシャバネルと一緒にいたら、下りで置き去りにされるのもわかっていた。それは彼の強みだからだ」
「マイヨ・アポワはケーキの上のチェリーさ!」
■ニーバリのコメント「レースはコンタドールの手中にあった。最後の上りはボクよりも彼向きだった。とてもむずかしく、爆発的だったんだ。彼はチームを働かせていたから、何かしたいのはすぐにわかった。彼は攻撃し、ボクはうまく対処した。ギアの選択で小さなミスをしてしまった。それはちょっと大きかった」
■コンタドールのコメント「ボクはニーバリがどんな感じが見たかったんだ。彼があまりにもぴったり付いてきたから驚いたよ」
7月13日はジェラールメールからミュールーズまでの170kmで、第9ステージが行われる。スタートしてすぐにカテゴリー2の峠越えがあり、6ヶ所の登坂があるが、ゴールは峠を下った先にある。
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■第8ステージ結果[7月12日/トンブレーヌ~ジェラールメール(ラ・モーズレーヌ)▲▲▲/161km]
1 ブレル・カドリ(AG2R/フランス)3時間49分28秒
2 アルベルト・コンタドール(ティンコフ・サクソ/スペイン)2分17秒
3 ビンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ/イタリア)+2分20秒
4 リッチー・ポート(スカイ/オーストラリア)+2分24秒
5 ティボー・ピノ(FDJ.fr/フランス)+2分28秒
6 ジャンクリストフ・ペロー(AG2R/フランス)+2分28秒
7 アレハンドロ・バルベルデ(モビスター/スペイン)+2分36秒
8 ティージェイ・バンガルデレン(BMC/米国)+2分40秒
9 ロマン・バルデ(AG2R/フランス)+2分48秒
10 シルバン・シャバネル(IAM/フランス)+2分54秒
11 バウケ・モレマ(ベルキン/オランダ)+2分55秒
12 ルイ・コスタ(ランプレ・メリダ/ポルトガル)+3分01秒
18 ユルフン・バンデンブルック(ロット・ベリソル/ベルギー)+3分37秒
27 ミハウ・クウィアトコウスキー(オメガファルマ・クイックステップ)+3分56秒
35 アンドリュー・タランスキー(ガーミン・シャープ/米国)+4分37秒
163 新城幸也(ヨーロッパカー/日本)+20分32秒
■第8ステージまでの総合成績
1 ビンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ/イタリア)33時間48分52秒
2 ヤコブ・フグルサン(アスタナ/デンマーク)+1分44秒
3 リッチー・ポート(スカイ/オーストラリア)+1分58秒
4 ミハウ・クウィアトコウスキー(オメガファルマ・クイックステップ/ポーランド)+2分26秒
5 アレハンドロ・バルベルデ(モビスター/スペイン)+2分27秒
6 アルベルト・コンタドール(ティンコフ・サクソ/スペイン)+2分34秒
7 ロマン・バルデ(AG2R/フランス)+2分39秒
8 ルイ・コスタ(ランプレ・メリダ/ポルトガル)+2分52秒
9 バウケ・モレマ(ベルキン/オランダ)+3分02秒
10 ユルフン・バンデンブルック(ロット・ベリソル/ベルギー)+3分02秒
13 ティージェイ・バンガルデレン(BMC/米国)+3分34秒
16 アンドリュー・タランスキー(ガーミン・シャープ/米国)+4分22秒
123 新城幸也(ヨーロッパカー/日本)+53分44秒
[各賞]
■マイヨ・ベール:ペーテル・サガン(キャノンデール/スロバキア)
■マイヨ・アポワ:ブレル・カドリ(AG2R/フランス)
■マイヨ・ブラン:ミハウ・クウィアトコウスキー(オメガファルマ・クイックステップ/ポーランド)
■チーム成績 :アスタナ(カザフスタン)
■今日の敢闘賞 :ブレル・カドリ(AG2R/フランス)