【Tour速報】アルプス山岳2日目の第14ステージはポーランドのマイカが区間初優勝!
第101回ツール・ド・フランス(UCIワールドツアー)は、7月19日にグルノーブルからカテゴリー1のリズール頂上までの177kmで第14ステージを競い、24歳のラファウ・マイカ(ティンコフ・サクソ)が逃げ切って、プロ初優勝となる区間優勝を果たした。
マイヨ・ジョーヌのビンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ)は、マイカより24秒遅れの区間2位になり、総合首位の座を守った。
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アルプス山岳2日目の第14ステージは、173人が出走。スタートの気温は26度Cで、猛暑は一旦収まった。オフィシャルスタートからアタックしたのは、前日に山岳賞首位の座を失ったスペインのホアキン・ロドリゲス(カチューシャ)だった。
ロドリゲスは首位のニーバリに17ポイント差を付けられて2位に陥落したが、この日もマイヨ・アポワを着ることは許された。しかし、借り物ではない本物を獲得するために、彼は逃げを選択した。
16km地点で形成された17人の逃げ集団に、ロドリゲスはきっちり加わることができた。そこにはマイヨ・ベールのために走るペーテル・サガン(キャノンデール)や、総合のチームリーダーを失って区間優勝を目指すマイカやニコラス・ローチ(ティンコフ・サクソ)、ゲラント・トーマス(スカイ)が加わっていた。
30km地点で17人と集団のタイム差は3分25秒になっていた。40km地点の中間スプリントポイントは、マイヨ・ベールのサガンが先頭で通過し、この日のノルマをきっちり果たした。彼はここまでで361ポイントを稼ぎ、2位のブライアン・コカール(ヨーロッパカー)に大差を付けている。
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82km地点のロータレ峠山頂(カテゴリー1)は、マイヨ・アポワのロドリゲスがトップで通過し、まずは10ポイントを獲得した。集団はネットアップ・エンドューラがアスタナのコントロールに加勢していた。
標高2360メートルで今大会最高峰のイゾアール峠(カテゴリー超級)のふもとで、逃げと集団のタイム差は2分半に縮まっていた。厳しい峠越えで先頭グループからは脱落者が相次ぎ、山頂では10人ほどになっていた。
ゴールまで残り44.5km地点のイゾアール峠もロドリゲスが先頭で通過し、25ポイントを獲得した。マイヨ・ジョーヌ集団は今大会絶好調で、チーム成績トップのAG2R・ラモンディアル(フランス)が先頭を引き出した。
イゾアール峠からの下り坂では、マイヨ・ブランのロマン・バルデとジャンクリストフ・ペローのAG2Rコンビがアタックして先行。集団の後方では、バルデとマイヨ・ブランを争うティボー・ピノ(FDJ.fr)が遅れる場面もあった。しかし、精鋭が揃うマイヨ・ジョーヌ集団は、ゴールまで残り23kmで1つになった。
残り12.6kmで、ゴールへと向かうリズール峠(カテゴリー1)がスタート。先頭の逃げとマイヨ・ジョーヌ集団のタイム差はたった1分だった。先頭グループから最初にアタックしたのは、昨年のクリテリウム・デュ・ドーフィネ(UCIワールドツアー)がこの峠をゴールに使ったとき、区間優勝したアレッサンドロ・デマルキ(キャノンデール)だった。
先頭のデマルキにはすぐにホセ・セルパ(ランプレ・メリダ)が合流したが、残り9.5kmで脱落した。しかし、すぐにマイカが追いつき、デマルキを置いて先頭に立った。AG2Rがコントロールするマイヨ・ジョーヌ集団からは、総合8位だったユルフン・バンデンブルック(ロット・ベリソル)が脱落してしまった。
頂上ゴールでポイントを稼ぎたいロドリゲスはデマルキに合流し、マイカを追った。マイヨ・ジョーヌ集団では、リズール峠がスタートするとアスタナのアシスト選手たちが次々と脱落していったが、今のニーバリには問題がなかった。
しかもニーバリにとっては都合の良いことに、15人ほどに減ったマイヨ・ジョーヌ集団はベン・ガスタウアー(AG2R)が、総合上位を目指すバルデとペローのために引き続けていた。
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マイヨ・ジョーヌのニーバリは、ゴールまで残り4kmでアタック。ペローはすぐに付き従ったが、総合を争うアレハンドロ・バルベルデ(モビスター)やマイヨ・ブランのバルデは置き去りにされてしまった。マイカとの差はたった1分10秒だった。
しかし、この日のニーバリは区間優勝のためには走っていなかった。ペローを従えたまま走り続け、前日のようにアタックすることなくゴールを目指したため、マイカは30秒のアドバンテージを持ってフラム・ルージュを通過した。
そしてマイカは、前日には果たせなかった区間優勝を勝ち取ることができた。彼は1993年に区間優勝したゼノン・ヤスクラに続いて、ツールで区間優勝した2人目のポーランド人になった。
ゴール後にニーバリは「目標はバルベルデにタイム差を付けることだった。けれど、マイカを捕まえられたかどうかはわからない。ボクが加速したとき、彼には十分なタイム差があったからね。とにかく、彼は優勝に値する選手さ」と、話していた。
後方では、追走グループからバルベルデが脱落。ゴール後に、ピノと接触してメカニカル・トラブルが発生したせいだということがわかった。「ボクはダメになってなんかいないさ」と、バルベルデは語っている。
アルプス2日目は、奇しくも前日の区間トップ10と同じメンバーがトップ10に顔を揃える結果となった。2分以上遅れたバンデンブルックは、総合でもトップ10から陥落してしまった。
ロドリゲスは結局区間31位でゴールし、リズール峠ではポイントを稼げなかったが、山岳賞トップに返り咲き、マイヨ・アポワを奪還した。しかし、2位のマイカが同じ88ポイントで並び、3位のニーバリはたった2ポイント少ない86ポイントだ。ロドリゲスの闘いはピレネーでも続くだろう。
この日はスタートしてすぐにラファエル・バルス(ランプレ・メリダ)がリタイアした。彼は朝から左ヒザの痛みを訴えていた。
さらにイゾアール峠の下り坂では、カーブで道路にあった石を見逃してしまったドリス・デベナインス(ジャイアント・シマノ)が転倒し、そのまま救急車で搬送された。彼は意識を失いはしなかったが脳震盪になり、右肩と右ヒジを負傷した。
■プロ初優勝がグランツール区間初優勝になったマイカのコメント「これはポクにとってプロで初めての勝利だった。ボクはいつも2位や3位だった。ツールで何か大きなステージ優勝が必要だった。ボクがこのツールを走りたくなかった、というのは実話ではないよ」
「マネージャーと監督はボクに“ツールを走ることになるが、最初の1週間は気楽に走っていい”と言った。コンタドールを山岳で助ける計画だったが、我々は不幸に見舞われた。彼の事故以来、ボクたちは区間優勝を目指している」
「ボクがツールを走っているのは、クロイツィーゲルが走れなくなったからだと考えるのも間違っている。彼がスタートしていたら、ボクらは2人ともチームの一員になっていたよ」
7月20日はタラールからニームまでの222kmで、カテゴリー付けされた山岳ポイントがない第15ステージが行われる。(MAP:ASO)
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■第14ステージ結果[7月19日/グルノーブル~リズール▲▲▲▲/177km]
1 ラファウ・マイカ(ティンコフ・サクソ/ポーランド)5時間08分27秒
2 ビンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ/イタリア)+24秒
3 ジャンクリストフ・ペロー(AG2R/フランス)+26秒
4 ティボー・ピノ(FDJ.fr/フランス)+50秒
5 ロマン・バルデ(AG2R/フランス)+50秒
6 ティージェイ・バンガルデレン(BMC/米国)+54秒
7 フランク・シュレク(トレック/ルクセンブルク)+1分01秒
8 ローレンス・テンダム(ベルキン/オランダ)+1分07秒
9 レオポルド・ケーニヒ(ネットアップ・エンデューラ/チェコ)+1分20秒
10 アレハンドロ・バルベルデ(モビスター/スペイン)+1分24秒
16 バウケ・モレマ(ベルキン/オランダ)+2分40秒
26 ユルフン・バンデンブルック(ロット・ベリソル/ベルギー)+4分59秒
31 ホアキン・ロドリゲス(カチューシャ/スペイン)+6分52秒
129 新城幸也(ヨーロッパカー/日本)+25分24秒
■第14ステージまでの総合成績
1 ビンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ/イタリア)61時間52分54秒
2 アレハンドロ・バルベルデ(モビスター/スペイン)+4分37秒
3 ロマン・バルデ(AG2R/フランス)+4分50秒
4 ティボー・ピノ(FDJ.fr/フランス)+5分06秒
5 ティージェイ・バンガルデレン(BMC/米国)+5分49秒
6 ジャンクリストフ・ペロー(AG2R/フランス)+6分08秒
7 バウケ・モレマ(ベルキン/オランダ)+8分33秒
8 レオポルド・ケーニヒ(ネットアップ・エンデューラ/チェコ)+9分32秒
9 ローレンス・テンダム(ベルキン/オランダ)+10分01秒
10 ピエール・ロラン(ヨーロッパカー/フランス)+10分48秒
11 ユルフン・バンデンブルック(ロット・ベリソル/ベルギー)+11分02秒
79 新城幸也(ヨーロッパカー/日本)+2時間12分51秒
[各賞]
■マイヨ・ベール:ペーテル・サガン(キャノンデール/スロバキア)
■マイヨ・アポワ:ホアキン・ロドリゲス(カチューシャ/スペイン)
■マイヨ・ブラン:ロマン・バルデ(AG2R/フランス)
■チーム成績 :AG2R・ラモンディアル(フランス)
■今日の敢闘賞 :アレッサンドロ・デマルキ(キャノンデール/イタリア)