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宇都宮ブリッツェンの増田成幸がバセドウ病でレース欠場。復帰を目指して治療中
レース
2017.05.18
ツール・ド・とちぎ(2017年3月31日〜4月2日)以降、レース活動を休止している宇都宮ブリッツェン所属の増田成幸選手は5月18日(木)宇都宮市内にて記者会見を行い、甲状腺の疾患であるバセドウ病を患っていると公表した。
5月21日開幕の「ツアー・オブ・ジャパン」を始め当面はレースを欠場するが、一刻も早い復帰を目指し治療を続けるとのこと。これまでの経緯と今後の見通しについて、宇都宮ブリッツェンの清水監督、廣瀬GM、増田選手本人が説明を行った。
5月21日開幕の「ツアー・オブ・ジャパン」を始め当面はレースを欠場するが、一刻も早い復帰を目指し治療を続けるとのこと。これまでの経緯と今後の見通しについて、宇都宮ブリッツェンの清水監督、廣瀬GM、増田選手本人が説明を行った。
清水監督:
現状でチームのキャプテン・鈴木真理と、ここにいる増田がレースに出られない状態が続いています。ただ、チームとしては決してネガティブな状態ではありません。成績は収めていませんが、若手メンバーが日本代表のメンバーに召集されているということもあったからだと思っています。
現在、日本代表として欧州遠征に召集されていた選手たちも帰国しておりますし、日本代表に選手されること自体ポジティブなことでもありますので、この後に控えていますツアー・オブ・ジャパンもU23の若手選手たちが強力なので今までと遜色ない動きがチームとしてできると思っています。
増田選手は今シーズン、アジア選手権の日本代表メンバーに選出されて、機材関係のトラブルという不運もあって結果はついてきませんでしたが、調子も良く実力通りの走りを見せてくれました。国内ツアーJプロツアーの開幕戦では惜しくも優勝はなりませんでしたが、チームとしても増田選手自身も存在感を発揮する走りをしてくれたと思います。
そして、ツール・ド・とちぎに入り、本人が明らかに体調が悪いということで「ツール・ド・とちぎが終わってから、しっかりと精密検査をしよう」という話をしていました。その結果、医師からバセドウ病という診断がありました。このことによって、症状が安定するまではレースは欠場するという方向で進めています。
増田選手:
現状、体調は日常生活を送る分には支障がない程度にまでは回復しています。
ツール・ド・とちぎ後の時期は、この病気の症状が一番強く出ていました。この病気の症状というのが、暑がりになったりとか体重が著しく減少したりということが起こりやすくなる。あとは心臓がドキドキして動悸・息切れがするという症状があります。夜もなかなか眠れないような、心臓が早く動き過ぎて辛い日が続いていました。そのピークの頃と比べると今はだいぶ落ち着いています。
肉体的にも辛かったですし、それに伴って精神的にも辛い日々を過ごしていましたが、今はやっと復帰に向けて頑張りたいなと、体の回復とともにそういったモチベーションも少しずつ湧いてきています。
復帰の時期に関してはまだ未定ですが、今日ここで皆様の前でご報告させていただくとともに、自分がこうして甲状腺の疾患を患いながらもまた競技に復活していく。そこでまた成績を出していくという姿を見てもらって、同じ病気を持った人だけでなくチームを応援してくださる方に勇気を与えることができたらと思っているところです。
廣瀬GM:
チームとしても運営会社としても、増田選手の今後の復帰に向けて最後までしっかりとサポートしていく気持ちでおります。それまでは今いるメンバーでしっかり戦っていきますし、増田選手の言葉にあったように、復活していく姿を一人でも多くの方に見てもらって勇気を与えたいという気持ちに関してもしっかりサポートしていきたいと思っております。
Q.いつ頃から「体調がおかしい」と感じるようになったのですか?
増田選手:
この病気はいきなりではなく、少しずつ症状が現れてくる病気なのでなかなかわかりにくいところもあります。朝起きるのが辛かったり、普段から疲れやすくなったり、という日常生活での体調の変化と勘違いしてしまいがちです。
病院に検査に行ったのはツール・ド・とちぎが終わってからですが、今思うと、ツール・ド・とちぎは本当に絶不調でしたし、その2週間前のJプロツアーのときもかなり体重が絞れてしまっていて、60kgを切るようなところまでいっていました。一生懸命食べてはいたのですが、この甲状腺の疾患のせいで新陳代謝がものすごく促進されていたのだと思います。周りの選手からも「増田、絞れすぎだな」とか「大丈夫?食べてる?絞り過ぎだぞ」ということを言われていたので、Jプロツアー開幕戦の少し前から、少しずつ体調は悪くなっていたのかなと思います。
Q.病院に行かれたのは何日でしたか?
増田選手:
具体的には覚えていませんが、ツール・ド・とちぎが終わった週でした。
Q.現在はどのような治療をしているのですか?
増田選手:
治療方法は幾つかありますが、今、自分が行っているのは投薬による治療です。他の治療法も含めて今は考えているところですが、一刻も早く選手、レース活動に復帰できる道を模索しているところです。
Q.復帰に向けての想いを教えてください。
増田選手:
この病気が分かった時は気持ち的にも落ちていましたし、人前に出たくないとか、ここから居なくなりたいとか、ネガティブな感情も芽生えた時もありました。でも、今は違いまして、こうして皆さんの前で今のこの現状をしっかり報告させてもらって、ここからの復活劇というか、自分がまた競技者としてレースの現場に戻っていく姿を皆さんに届けたいなと思いますし、それを見てさらにチームを応援してもらいたいなという気持ちです。
Q.今は、練習をしていないのですか?
増田選手:
今は練習という練習はしていませんが、自転車に跨るぐらいはできるようになりました。
Q.復帰のメドは未定とのことですが、投薬を止めないとドーピングなども含めて復帰は難しいのでしょうか?
増田選手:
投薬している薬に関してはドーピングに引っかかるものではありません。例えば、ドーピングに引っかかる薬であっても、病気の治療という理由があって申請をすれば使えたりもします。
自分だけでなく、甲状腺の疾患を抱えている人は日本におよそ500万人ぐらい、糖尿病の患者さんとほぼ同じくらいいらっしゃるということです。スポーツ選手でも、サッカーや水泳などいろいろな競技に甲状腺の疾患を抱えた選手がいます。彼らも手術をしたり、薬を飲みながら競技に復帰をしているので、自分もこのまま薬を飲み続けて落ち着くのを待って競技に復帰するのか、また別の治療法を選択するのかまだ分かりませんが、復帰に関しては必ずできると信じています。
Q.治療法の選択、復帰の判断はどのようにする予定ですか?
増田選手:
現状では薬が効いていると思うので、このまま落ち着いてくれればいいですが、どの治療法にもメリット・デメリットがあると思うので、その辺りをしっかり踏まえて選択していきたいと思います。
Q.今季、復帰の可能性は?
増田選手:
医師と話しているところでは、ホルモンの値が落ち着いたらトレーニングも復帰もしていいよという感じですが、体がなかなかついてこないということもあると思います。まだ完全に抑え込んでいる訳ではないので、復帰がいつになるかは本当にわからない状態です。
Q.開幕前には東京五輪に向けての意気込みも語っていましたが、現時点での気持ちは?
増田選手:
東京五輪を目指して「さぁ、これから!」という時に病気が判明して、正直、打ちひしがれるというか、自分でも自分を信じきれない部分がやはりあって。でも、ここで諦めてしまったらと思いますし、僕の人生はこれまでもそうでしたが、信じてやるしかないです。前を見て、1ミリでも前に進むために努力したいと思います。
Q.今回の件を受けて、チームメートの反応は?
増田選手:
なかなかリアクションしにくいことだと思います。ほとんどの選手が自分よりも年下の選手ですし、繊細な話だとも思いますので、みんな気を遣ってるというのは感じました。ただ、これはチームの誰がなっても同じことだと思うので、今は逆に今週末から始まるツアー・オブ・ジャパンという重要なレースを走る彼らを応援したいという気持ちです。
Q.辛い日々を送る中で、支えになったものは?
増田選手:
身近なところで言えば家族の存在があります。また、走れなくなるということは選手として終わりなのですが、そこでチーム、運営会社が復帰に向けてサポートしてくれるという強い意志を自分に伝えてくれましたし、辛い気持ちを監督はじめ運営会社の皆さんも共有してくださっているので、そういう部分では自分は一人ではないという気持ちで日々を過ごしています。
Q. 鈴木真理キャプテンからは何か声をかけられましたか?
増田選手:
真理さんもまた別の病気というか治療で戦っていますが、やっぱり辛い思いをしている分、自分にかけてくれる言葉も説得力というか重みがあります。ただの気休めじゃないことを色々とアドバイスしてくれましたし、自分も真理さんに気持ちとか現状を話すことで楽になれた部分はありました。走れる・走れないという前に、一人の人間として健康は大事だよと、簡単に言うとそんな話をしました。
Q.バセドウ病のどういった症状が一番大変ですか?
増田選手:
バセドウ病はしっかり治療すれば死に至るような病気ではありませんし、何の問題もないのですが、放置しておくと動悸がコントロールできなくなって、不整脈になって、心筋梗塞など心臓のトラブルで命の危険にさらされることもあります。
大変だったのは心臓の動きの部分で、いつもの数倍心拍が上がることもありました。実際、ツール・ド・とちぎでも息が切れて、呼吸が辛すぎて脈拍も早くなって、なかなかパフォーマンスを発揮できなくて。最初は貧血かなぁとも思いましたが、調べてみたら甲状腺に問題があったということです。
Q.体重はどのくらい落ちたのですか?
増田選手:
ベスト体重から、3~4kgぐらい落ちました。
Q.清水監督への質問です。エースの欠場をどう考えていますか?
清水監督:
これまでのチームは、増田中心で動かしてきたところがあるのは間違いないので、チームとしては悔しいところではあります。ただ同時に、若手選手の成長も常にありました。
直近のレースで言えばツアー・オブ・ジャパンは雨澤を中心に走ろうと思ってはいますが、増田がいたとしても恐らく、総合成績で増田と雨澤をペアとしていっしょに戦うことができたと思っています。
本当に悔しいですし厳しいことではありますが、その分、増田がいない間に若手選手にはチャンスが増えますので、それを生かして欲しいと思います。それで、増田が戻ってきた時、さらにもう一段上がったチームに増田が加わることになれば、さらにチームは強くなると思いますので、それを意識して戦っていきたいと思います。
Q.チームの社会貢献活動に参加していますが、できる範囲での活動は続けるのでしょうか?
増田選手:
もちろん、そのつもりです。やっぱり自転車で走れない分、何かしたいなという気持ちですし、人と会ってエネルギーを交換することで元気になれる部分があるので。先日、ウィラースクールで小学校に行った時も、また頑張りたいなという気持ちを小学生の子どもたちからもらいました。これからもそういった活動は積極的に参加していきたいと思っています。
Q.今後、ファンの方たちがどのように接してくれるとうれしいですか?
増田選手:
自分の方から皆さんにリクエストすることは、今の段階で特に思い当たらないです。でも、そうやって質問してくださること自体がすごくありがたいことなので、また普通の選手として、強い姿を皆さんにお見せしたいという一心です。
Q.病気が判明した時、引退という考えはよぎったのでしょうか?
増田選手:
どこまで考えたらよぎったということなのか、よくわかりませんが、自分は引退については絶好調の時から常に頭の片隅にはありました。
でも、この病気になって、このまま選手を辞めるのは嫌だなという気持ちにはすごくなりました。やっぱり、柿沼社長や廣瀬GMのように引退レースを走ってポジティブに辞めていきたいというのが自分の願いです。なので、もう一度走れるように頑張りたいと思います。
Q.ファンの皆さんにひと言
増田選手:
いままで自分が味わってきたのは怪我とか事故とかの試練で、今はまた違った試練が自分に起こっているんだということを感じています。これを乗り越えて選手として復帰して、以前のような強さに戻れるかどうか、以前より強くなれるかどうかというのは、考えれば考えるほど不安になることばかりです。とにかく今日よりも明日、明日よりも明後日という想いで一歩ずつ前に進んでいきたいと思いますので、温かく見守っていただければと思います。
問・サイクルスポーツマネージメント(宇都宮ブリッツェン)
http://www.blitzen.co.jp