トピックス

CYCLE SPORTS.jpが選ぶ 2016年10大ニュース・プロダクツ編

2016年もあとわずか! ということで恒例の10大ニュース・プロダクツ編をお届けします。振り返ってみると、かなりコンポーネント関連が豊作の年でしたね。他にも他にもウエアラブル機器や、eバイク、バイクパッキングと気になるトピックスをまとめました。
 
text:中島丈博 photo:山内潤也、中島丈博

1.デュラエースモデルチェンジ

9100系デュラエース
9100系デュラエース
まずはなんといっても外せない、デュラエースのモデルチェンジ。9000系から9100系へと進化。リヤ11速を維持してはいるが、リヤディレーラーはMTBで長年採用されてきたシャドータイプをロード用として初めて採用。横方向への張り出しを少なくし、転倒時のリヤディレーラー損傷のリスクを軽減している。また来るべきディスクブレーキロード時代にはリヤエンドのOLDが142mmまで広がることになるので、今以上に横へリヤディレーラーが張り出すことになることを考えると、合理的な設計だ。ローギヤ最大30T(前作は28T)に対応したのも大きなトピックス。アルテグラでしか対応できなかったワイドレシオをデュラエースでも実現できる。シングルテンション化されたことにより、今までよりもリヤホイールの着脱にコツがいる。フロントディレーラーもワイヤルートを大きく変更。組手によって変速性能に差が出にくい設計に進化している。
クランクはよりボリュームアップし、かなりマッシブな外観になった。独特の表面仕上げは、シマノの技術が可能にした深いブラックで高級感のある仕上がりになっている。ノーマルキャリパーのリムブレーキはもちろん制動力が向上しているが、それ以上にダイレクトマウントブレーキの制動力向上が顕著に感じられる。
現在国内で販売されているのは機械式のみだが、Di2の予約がスタートしており、ディスクブレーキ対応モデルも順次発売されることになる。
ホイールはリムハイトに変更があり35mm、50mmというラインナップから40mm、60mmへと変更になった。24mmは継続。ディスクブレーキ対応ホイールも用意される。
上記以外にも刃先形状や、ブラケットの素材、形状など細部まで細かくブラッシュアップされており、デュラエースの名に恥じない仕上がりになっている。

関連記事→http://www.cyclesports.jp/search/keyword/9100
 
デュラエースグレードでディスクブレーキ対応ロードホイールが登場するのが楽しみだ
デュラエースグレードでディスクブレーキ対応ロードホイールが登場するのが楽しみだ
Di2のフロントディレーラー
Di2のフロントディレーラー
パーツブランド「プロ」の展開も見逃せない
パーツブランド「プロ」の展開も見逃せない

2.ロードコンポーネント新興勢力

ツールでのテストを経て、2016年ユーロバイクショーで発表されたFSA・KフォースWE
ツールでのテストを経て、2016年ユーロバイクショーで発表されたFSA・KフォースWE
パリ〜ニースの最終ステージにはローター・ウノを搭載したバイクがチームカーのルーフに搭載されていた
パリ〜ニースの最終ステージにはローター・ウノを搭載したバイクがチームカーのルーフに搭載されていた
シマノ・デュラエース9100系の登場は大きなトピックスだった。だが、それだけではなく2016年はロード用コンポーネントの新勢力が産声を上げた年でもあった。2015年からたびたび情報がもたらされていたローター・ウノ。楕円チェーンリングや、パワーメーター搭載のクランクで知名度を誇る同社がロード用コンポーネントを発表したのは2015年のユーロバイク。そして2016年の春にはかなりの完成度まで仕上げてきており、パリ〜ニースのフィニッシュ地点ではディメンション・データのチームカーに搭載されているのを確認している。最大の特長は変速操作をワイヤでもなく、電動でもなく液圧によって制御するというところ、ブレーキは油圧でマグラ製のブレーキを採用している。残念ながらまだ市販化には至っていない。
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もう一つの新勢力がFSAだ。ハンドル、ステム、シートポスト、クランク、ホイール、ブレーキと、変速系以外は揃っていた同社がついにコンポーネントを発表した。「KフォースWE(「wireless electronic」の頭文字)」と名付けられたそれは”セミワイヤレス”と謳われている。そのゆえんは、シフトレバーからはブレーキワイヤのみが出ていて、変速系はワイヤレスだからだ。だが、バッテリー〜フロントディレーラー〜リヤディレーラーは有線でつながり電気を供給する電動変速を採用している。近年のロードバイクで煩雑になっているハンドル周りのワイヤリングの手間を省きつつ、バッテリーを1つとすることで充電の手間を減らすという、”先輩”コンポーネントであるシマノDi2とスラムeタップのポジとネガをあわせたポジションをねらう。コフィディスチームと実戦テストを経ており、発売時期が発表されるのが楽しみだ。
関連記事→http://www.cyclesports.jp/articles/detail/68781
 





3.MTBコンポーネントはXTがDi2化。スラムはXX1イーグルでリヤ12速へ

ロードバイクのコンポーネントはもちろん、MTBのコンポーネントも今年は大きなトピックスがあった。シマノからはXTRに続いて、セカンドグレードのXTもDi2化された。各パーツのスペックはXTRに準じるものになっており、一番の魅力である「シンクロシフト(リヤの変速操作を行なうだけで、適宜自動でフロントも変速し、フロント×リヤをギヤ比の差がスムーズになるような組み合わせを自動的に選んでくれる機能)」が、より手に入れやすい価格になった。
関連記事→http://www.cyclesports.jp/articles/detail/61655

シマノのライバルであるスラムも、手をこまねいているわけではない。5年前に”フロントシングル”を提唱し、一大ムーブメントを巻き起こしたスラムが、シマノに先んじてリヤ12速化を達成した。MTB XCOシーンに対応する、ピュアレーシングモデルの「XX1イーグル」がそれだ。リヤスプロケットは、10-50T(10T-12T-14T-16T-18T-21T-24T-28T-32T-36T-42T-50T)というワイドな構成。
関連記事→http://www.cyclesports.jp/articles/detail/60808
 

4.シマノ新ジャンルコンポーネント メトレア登場

”自転車界にとってMTB以来のエキサイティングな商品”と同社が言うほどのカテゴリーが”アーバンスポーツ”。そこにシマノが提唱するコンポーネントが「メトレア」だ。アーバンスポーツの乗車姿勢はクロスバイクよりも深く、ロードバイクよりも浅い、上半身の角度が60度~45度になる。その状態で快適なハンドリングを提供できるように設計されている。ブルホーンタイプのハンドルは「Hタイプ」と名付けられた専用規格が必要。フロントはシングルとダブルが用意され、ブレーキは油圧ディスクのみのラインナップになる。スタイリッシュな外観は魅力的。
関連記事→http://www.cyclesports.jp/articles/detail/59850
 


5.スマートで高機能なセーフティーアイテムが登場

被視認性を高めることで、サイクリスト自ら身を守り事故を減らす。そのためのアイテムとして、各社から高輝度ライトが登場した。特にトレックの動きは大きな注目を集めた。その理由は昼間でもライトを点灯させ、ドライバーにサイクリストの存在をより早く気づいてもらうため。宇都宮で開催されたジャパンカップではトレック・セガフレードチームが特別な蛍光イエローのウエア、ヘルメットに身を包み、デーライトをつけてクリテリウムを走った。
編集部では、実際に都内の一般道で被視認性の高いアイテムを付けて走行した動画を作成。その効果を確認して欲しい。
 


6.電子ディバイスが多数登場 codeo、ソロス、cerevo

コピン・ソロス
コピン・ソロス
コデオ
コデオ
セレボ・ライド1
セレボ・ライド1
ウエアラブルデバイスの充実は2016年も続いた。コピン・ソロスはリオ五輪で自転車トラック競技米国代表も使用したヘッドアップディスプレイだ。
関連記事→http://www.cyclesports.jp/articles/detail/72632

コデオは、サイクリング中でも便利につかえる骨伝導ヘッドホン。耳を塞がないため、周囲の音も認識しながら走ることができる。
関連記事→http://www.cyclesports.jp/search/keyword/%25E3%2582%25B3%25E3%2583%2587%25E3%2582%25AA

各分野で進んでいるIoT(モノのインターネット化)の波が、自転車にも。セレボ・ライド1は9軸センサーを搭載したハードウエアで加速度、角速度、地磁気、温度、湿度、気圧、照度、GPSの各センサーを搭載。ブルートゥース、ANT+で他のアクセサリーと連携することにより、例えばトンネルなどで自動でライトを点灯させることができる。また、走行ログも単なる走行経路以外にもブレーキングなどバイクの詳細な挙動を記録、インターネットで共有するなど、ソフトウエアの開発次第でスポーツバイクの「見える化」を実現する。
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バイクパッキング

輪行袋メーカーのオーストリッチが試作したサドルバッグ。日本人のサドル高でもリヤタイヤとバッグが接触しないボリューム
輪行袋メーカーのオーストリッチが試作したサドルバッグ。日本人のサドル高でもリヤタイヤとバッグが接触しないボリューム
アピデュラのサドルバッグ。軽量、防水でデザインもスタイリッシュ
アピデュラのサドルバッグ。軽量、防水でデザインもスタイリッシュ
2016年は、サイクリングのスタイルとして「バイクパッキング」という言葉をよく耳にした。大型のサドルバッグがアイコン。そのほかハンドルバッグや、フレームバッグなど、軽量で防水性能が高いバッグが発表された。ユーロバイクの会場でも複数のブランドがスタイルを提案していた。キャンプツーリングに行くもよし、バックパックを背負っている人はバイクへ荷物を搭載できるので、サドルへの荷重を減らすことができるし、夏場にバックパックによって背中が蒸れるということもない。
 

8.ディスクブレーキ搭載モデルのさらなる増加

サーヴェロ・P5X
サーヴェロ・P5X
スペシャライズド・ヴェンジディスクヴァイアス
スペシャライズド・ヴェンジディスクヴァイアス
プロレースシーンではディスクブレーキの試用が中止されてしまったが、各社のラインナップはディスクブレーキ搭載率がさらに上がった。エンデュランス系バイクは特に顕著でジャイアント、スペシャライズド、オルベアなどはディスクブレーキ搭載モデルのみになっているほど。また、エアロロードやトライアスロンバイクへディスクブレーキを採用する動きも進んだ。機械式ブレーキでは、ワイヤリングの複雑さによってブレーキ操作が重くなってしまうが、油圧ディスクブレーキであればそれが解消される。また空力性能を優先して、ブレーキルートをフレームに内蔵することができるので、非常にすっきりとした外観のバイクが出来上がる。
2017年シーズンはふたたびプロレースでディスクブレーキの試用がスタートすることになる。2016年のパリ~ルーベで、フランシスコ・ベントソが負傷し、オープンレターが出されたことによって試用が一時中止された。だが、その後の検証でベントソのけがはディスクブレーキが原因ではなく、チェーンリングが原因である可能性が高いとの見方が強い。リムブレーキバイクとディスクブレーキバイクが混走することで、集団内で選手同士の制動距離の違いで何が起こるか。機材トラブル時の新たな対応が必要になる。

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9.スポーツ走行向けeバイクのバッテリー大型化により航続距離が延びる

ヤマハ・YPJ−Rの登場により、国内スポーツバイクマーケットにもeバイクというジャンルが確立された。そこに世界からニューモデルが参入をはじめている。スタイリッシュなデザインの台湾メーカー「ベスビ」、イタリアのモーターサイクルメーカー「ベネリ」などだ。バッテリーの高性能化によって航続距離が最大で100kmを誇るモデルもある。このバッテリー高性能化の動きは一般車においても同様でブリヂストン、パナソニックから発売されたニューモデルも航続距離が伸びている。
日本国内ではアシスト比の規制があるが、その中でバイクのキャラクターにあわせたアシスト特性をチューニングすることでカタログスペックだけではわからない味付けがなされている。また、都市部ではシェアサイクルに電動アシスト付き小径車が活用される事例が増えているので、モビリティとしてさらなる発展の可能性も注目したい。今後、さらなる進化が期待される。

関連記事→http://www.cyclesports.jp/depot/tag/2014

10.カラーオーダーシステム実施率アップ

オルベアのカラーオーダーシステム「MyO(マイオー)」
オルベアのカラーオーダーシステム「MyO(マイオー)」
ビッグメーカーではカラーオーダーを選べるモデルが充実した。アンカー、オルベア、キャノンデール、トレック、ピナレロなど。自分の好きな色、チームジャージと合わせたコーディネートなど、楽しみの幅がより広がる。また既存のデザインではモデルイヤーがわかってしまうが、オーダーカラーであればそれがない。色以外にもコンポーネントも選べるメーカーもあるので、あとからパーツ交換をせずにベストな完成車を手に入れることができる。