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ゆるゆる十勝自転車旅 2016 参加レポート

イベント
『ゆるゆる十勝自転車旅  〜静岡-豊頃交流サイクルツアー2016〜』が、7月14日(木)〜18日(祝)に、北海道十勝の豊頃町を中心に襟裳岬(えりも)に至る広域ルートで開催された。静岡空港発15人、現地参加が3人、ガイドライドスタッフ15人の合計33人が参加した。

 
休憩所では、伴走車で運んでいるテーブルと自転車ラックが設置され、地元のスイーツが振る舞われる
休憩所では、伴走車で運んでいるテーブルと自転車ラックが設置され、地元のスイーツが振る舞われる

静岡空港発と現地参加の31人が十勝から襟裳岬まで自転車旅と食を満喫

『ゆるゆる十勝自転車旅』は、3年前の2014年から始まった「互産互消」という静岡県掛川市と豊頃町の地域間交流事業の一環で、夏は掛川から涼しい北海道へ、晩秋と春は豊頃から雪が降らない掛川へ、ツアーを組んで互いに訪問し合ってガイド付きサイクリングを楽しんでいる。主催は豊頃町商工会の「“こうふく”観光プロジェクト検討委員会」、事務局は一般社団法人北海道開発技術センターが担当。静岡空港発のツアー料金は、4泊5日で6万5000円。広域ルートになって走り応えが増したサイクリングと、十勝と日高の豊かな食を満喫したツアーに同行した。

ツアーは、2日目までは脚力別にA(ガンガン走る人向け25km/h想定)とB(ゆるゆる走る人向け 15km/h想定)」の2コース、3日目はAとB同一コースが設定されている。参加者は、今回が初サイクリングの人もいれば、ブルベ愛好者までいて、脚力に大きな差があるからだ。

同行したAコースのルートを紹介しよう。ぜひ走ってみたいという人のために、サイクリングルート案内の公開サイト“ルートラボ”のアドレスを付記したので、参考にしていただきたい。

 


サイクリング1日目(7月15日):http://yahoo.jp/R8QJsQ>

十勝平野の緩やかな起伏を走る。出発して、日高山脈麓の新嵐山展望台へ。ここがコースのハイライト。標高340mと低い山だが、平野から一気に登る激坂。頂上に設けられた木製の展望台からは雄大な十勝平野のパノラマが味わえる。新嵐山からは標高200mほどの台地を進む。

昼食は、中札内美術村・レストランポロシリ。広大な敷地内の柏林にあるカフェテリア形式のレストラン。好みのものを選んでトレーに載せていく。「食べすぎた〜!」という参加者が続出。個人的には、超濃厚なヨーグルト(生クリームも使用、乳脂肪分13・5%)が絶品だった。こんなにクリーミーなヨーグルトは初体験。

最後の25㎞は十勝川へ向かって下り基調なので、走行ペースが上がる。


 
日高山脈麓の丘陵、新嵐山スカイパークの激坂を登ったご褒美は十勝平野のパノラマ眺望
日高山脈麓の丘陵、新嵐山スカイパークの激坂を登ったご褒美は十勝平野のパノラマ眺望


サイクリング2日目(7月16日):http://yahoo.jp/8xB_JI>

豊頃市街地から十勝川河口に向かうが、十勝国道(38号線)ではなく“裏道”を伝って、太平洋戦争時に作られたトーチカが残るトイトッキ浜へ。ここから太平洋沿い南下する。標高100m未満のアップダウンが連続する。長節湖、キモントウ沼、生花苗沼(おいかまないぬま)と、湖沼と湿地伝いの道を進む。晩成社跡からは道道881号線を西に折れ、生花苗沼西岸に沿って続く裏道を行く。緑のトンネル道で、車はたまにしか通らない。鹿を目撃した人もいたほど静かな道。

昼食は、晩成温泉。海を眺めながら湯船に浸かれるヨード成分が含まれた温泉も楽しんだ。

大森カントリーガーデンのカフェに立ち寄り、宿となる広尾町のホテル大宝へ。夕食は、ホテル併設の魚料理店“かいせん”。漁師が経営する店で、ツブ貝、車エビ、ルイベ…新鮮な魚介類がテーブル一杯に並びコストパフォーマンス抜群!(宴会料理3000円〜)

 
南に太平洋と北に長節湖を望みながら走れる1本道
南に太平洋と北に長節湖を望みながら走れる1本道


サイクリング3日目(7月17日):http://yahoo.jp/B235QW>

広尾市街地から海岸線の黄金道路へ、フンベの滝で休憩後、少し戻って山側の道道1071号線を走る。唐松林の間に続く静かな道。音調津(おしらべつ)で再び海岸線の黄金道路に合流。黄金道路には全部で9つのトンネルがある。延長1㎞以上のトンネルが3つあり、えりも黄金トンネルは北海道で最長の延長4941m! トンネルと波打ち際の繰り返しながら庶野へ。ここから、天馬街道で太平洋に三角形に突き出た日勝半島を横断。追分峠を越えて西海岸へ。

庶野から海岸沿いに襟裳岬を目指せるが、ここは風の名所。風向きを考えて東海岸から岬を目指したが、それでも、向かい風が吹いた。襟裳岬へ至る道は緑の草原の中を行く上り下りの繰り返し。最後には道の両側に海を望める。

 
フィニッシュは、太平洋に突き出す襟裳岬。事故もなく、サイクリングは無事終了した
フィニッシュは、太平洋に突き出す襟裳岬。事故もなく、サイクリングは無事終了した

自転車旅と十勝旅行のヒント

ツアー同行中に、自転車旅行をする上で参考になりそうなことがあった。実際の例を元に紹介しよう。自転車の運搬、スペアパーツの携行、ゲストはハウス利用の3点だ。


●航空便輪行と自転車のトラック輸送の進化

静岡組は、静岡空港から新千歳空港までは全日空便、新千歳空港と現地の往復は、レンタカーのワンボックスとSUVを利用。飛行機輪行する人は、10mmウレタン入りで保護効果があるオストリッチの三つ折り式トラベルバッグOS-500(税抜き2万2000円)の利用者が多かった。

静岡空港の預託手荷物検査装置はそれほど大きくなく、この装置の荷物通過孔よりも大きい輪行袋は“目視”による検査になる。目視の場合、検査員が中身を見るために、袋を開ける必要がある。この面倒を避けるには、輪行袋が検査装置に通る大きさにまとめればいい。目視になりそうな大きさの場合は、袋を開閉するので厳重に閉じるのは避けたい。地方空港では検査装置は輪行を通せない大きさの場合が多い。一方、新千歳空港では、大きい検査装置が設置されていてこの問題は起きなかった。

静岡空港の全日本空カウンターでは、珍しい体験をした。「自転車 取扱注意! 搭載時はこの面を上に!」と記された紙が用意されている。係員が、1台1台荷物の持ち主に搭載時の上下を確認してから輪行袋の上にその紙をテープで貼り付けていく。輪行袋は横積みされるで、好ましい方式だ。

到着した新千歳空港の手荷物受取所では、通常の預託手荷物同様、自転車はコンベアで運ばれてくる。大きなたらいのような樹脂製のケースに輪行袋がすっぽり収まって運ばれてきた。ちなみに静岡空港の受け取り時には、輪行袋は大型荷物口から人手で運ばれてきた。

新千歳空港からは、道東道経由で帯広のホテルへ。参加者は、レンタカー2台に分乗。輪行袋入りの自転車は、北海道コカ・コーラボトリング(株)のグループ会社、幸楽運送(本社:札幌市)がパネルトラックで運搬。スポーツサイクルの運搬に意欲的で随所に工夫が見られた。輪行袋を立てたまま奥から積んでいくのだが、大型のウレタンフォーム製パッドを緩衝材として使う。最後にトランクやザックをキャスター付きのケージ2台に収めて横棒を渡して動かないように固定。15人分の輪行袋とバッグやザックが見事に収まった。

 
静岡空港の全日本空カウンターでは「自転車 取扱注意! 搭載時はこの面を上に!」の紙を用意
静岡空港の全日本空カウンターでは「自転車 取扱注意! 搭載時はこの面を上に!」の紙を用意


●レンタルに最適のジャイアント・デファイ4

帯広駅前のホテルに宿泊し、翌朝、駅北口広場のりくる前に集合。ここで、ツアーに協力した更別企業(株)に予約していたレンタサイクルとご対面。ロードバイクとクロスバイクが選べる。

ロードバイクは、ジャイアントのアルミロード“デファイ4”(税抜き8万5000円)。「5月に導入したばかりで、まだ1回しか使っていない」という。補助ブレーキレバーがハンドルバーの上部に付き、上体を起こした姿勢でブレーキ操作が可能。ワイドギヤ比で、前50・34T、後ろ11〜32T。ローギヤ32Tには助けられた。初日の新嵐山展望台へ上る坂は恐らく15%超の急勾配で、自転車を押して上る人がいたが、サドルに座ったまま上ることができた。タイヤ幅は25Cと太めで、乗り心地が良く疲れが少ない。

このモデルは、初心者に優しい設計・仕様なのでこのツアーはもちろん、レンタル用のスポーツサイクルとして最適。

 
レンタサイクルは、ロードバイクとクロスバイクを用意。ロードはジャイアントの2016年モデル
レンタサイクルは、ロードバイクとクロスバイクを用意。ロードはジャイアントの2016年モデル


携行して役立ったスペアのタイヤツアー中のメカトラブルはパンクがほとんどだったが、なぜかタイヤ切れが続出して3人でタイヤ4本の交換作業が行われた。ガイドライド1人と、参加者2人だったが、3人とも用意がいいことにスペアタイヤを携行していたので、タイヤ交換で修復した。

タイヤ側面の応急補修用品としては、パークツールの“TB-2 タイヤブート”(3枚入り税抜き590円)がある。大人数でのツーリングでは、タイヤブートはもちろんのこと、スペアのタイヤも用意した方がいいかもしれない。

 
一番多い故障はやはりパンクだったが、スペアパーツを携行していたので修復できた
一番多い故障はやはりパンクだったが、スペアパーツを携行していたので修復できた
パークツールのタイヤ再度補修用品”タイヤブートTB-2”(パークツール2016カタログより)
パークツールのタイヤ再度補修用品”タイヤブートTB-2”(パークツール2016カタログより)


●自転車旅に最適なエコノミー宿ゲストハウス
今回のツアーでは、これから開業予定のゲストハウス2軒を実験的に利用した。

1軒は、走行1日目の休憩に使った “アクティビティセンター ANDOOR”。更別村の市街地に出来たばかりの施設。レンタサイクル、ガイド付き自転車ツアーとフィッシングセンターの営業をしているが、2階に男女別の和室各1室と、ロッカー、シャワー、洗濯機を設け、ゲストハウス開業の準備中。

もう1軒は走行3日目に宿泊した、新冠町の国道235号線沿いの海を見下ろす丘の上に立つ(有)エムエスケイが開業予定のゲストハウス。1泊2500〜3000円程度で泊まれるエコノミーな宿が増えるのはサイクリストやバックパッカーにとって福音だ。積極的に利用したい。

 


更別村の野外活動支援施設 「ANDOOR(アンドオア)」。ゲストハウス、レンタサイクル業、フィッシングショップを営む。
http://andoor.jp