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今年、日本人に圧倒的な力を見せつけたチーム右京のオスカル・プジョルと右京監督振り返りインタビュー
レース
2016.11.04
11月2日(水)夕方、都内某所にてチーム右京のサンクスパーティーが行われた。UCIアジアツアーランキング 5位、Jプロツアーチーム総合優勝と今年はさらに多くの勝利を収めたチーム右京。活躍する先は日本国内にとどまらず海外においても健闘した。チーム右京の今年の活躍を凝縮したムービーが流れる中、ツアー・オブ・ジャパンやツール・ド・熊野など国内主要のUCIレースで日本チームに勝利をもたらしたオスカル・プジョルを含めたスペイン人5人、日本人6人の選手たちが片山右京監督とともに登場し、会場に集まったスポンサーの方々の拍手を受けて登壇した。パーティーが大いに盛り上がる中、今年の振り返りと今後について片山右京監督とプジョルに聞いた。
text&photo●滝沢佳奈子
text&photo●滝沢佳奈子
片山右京監督にインタビュー
CS:今年はツアー・オブ・ジャパン(TOJ)を勝って、ツール・ド・熊野も勝って、と成績を収めてきたチーム右京ですが、振り返って今季の満足度としてはどれくらいでしょうか?
右京監督:満足度に関しては90%くらいかな。でも人間だから欲があるから、じゃあ来年もっと今年弱かった部分を強くしようとか、そうやってちょっとずつ積み重ねていくだけ。
CS:今年足りなかったと感じてる部分や今後取り組もうとしてることを教えてください。
右京監督:足りなかったこととしては、オスカルは強かったけど、オスカルをアシストする選手がいなかったこと。例えば(脚質としての)キャラクターでジョン(・アベラストゥリ)を発射させることのできる平地を引ける選手であったり、誰かが逃げたらオスカルのためにブリッジかけられる選手であったり、強力なアシストがいなかった。
今後、日本人はだんだんレベル上がってきているけれど、まずはアシストから育てて、最終的には日本人がエースになれるようにプログラムを組もうとしている。また、オスカルが一番弱いというチームにしていく。そうやって一つずつ積み重ねていこうとしている。僕たちの夢はTOJで勝つこと、そして次がジャパンカップで優勝争いをするっていうことだった。今年も最終ラップまでは二人残ってたのに、どっちかがアタックしてとかをやらなかった。まだ監督がいなかったから。来年はサッカーみたいに外国からちゃんとした監督が入る。選手たちに言葉で説明しないとダメだし、僕はビジネスの方(がメイン)で、素人だからできないじゃない。そういうものを一個ずつ整えていって、最終的に(サッカーで言う)アルシンドとかジーコが来たみたいに海外で活躍した人たちが来て、日本人を強くしてもらって、日本人がヨーロッパなどの海外に行って、というのを同時にやっていきたい。来年は日本人をもっといっぱい入れて、もっと海外に行かせて、海外のレースにも積極的に参戦する予定。
CS:ツール・ド・フランスに出るという夢に向けて、進捗度としては何%くらいだと思いますか?
右京監督:0.5%(笑)。まだまだ玄関にも敷地にも入れてもらえてなくて、ピンポン押してるだけの状態。だけど、僕がF1ドライバーになりますって高校生の頃に言った時、周りに「何言ってんだ」って言われたけど、それに比べたらその10倍くらいいける自信がある。パリダカ出たり、ルマン出たり、エベレスト登ったりっていうのに比べたら、時間はかかるし、必要なものがいっぱいありすぎる。国の環境もそうだし、社会が変わってくるから。そういうものを変えていかないと自転車が全然溶け込まないでしょう。それをやっていかないとスポンサーが自転車の必要性がわからないし、モビリティだって思わないでしょう。遊びだと思ってるから。そのクルマ脳を変えていくのもそうだし、ビジネスをやるから自分たちがメーカーにもならなきゃいけない。今はジャージから入ってるけどね。年間20億とか30億とか、クルマのレーシングチームからいったら大した予算じゃないけど、ずっとそれをスポンサーに頼るわけにはいかないから、自分たちが自活能力を作んなきゃいけない。だからもうちょっと時間かかるんだよね。
CS:現状でNIPPOの大門監督がやられているようなこととは方向性が違うやり方のように思いますが。
右京監督:似てるところもあるし、違うところもあるし、ああいったのが近道でもあるしね。いろんなやり方・方程式があるから間違いじゃない。どこかで合流することもあるかもしれないし。将来的にはうちもいくつかのチームとジョイントしてやっていくこともあり得るだろう。でもうちはあくまでクルマのレーシングチームのマネージメントでやっていくつもり。
今シーズン大活躍だったオスカル・プジョルにインタビュー
CS:今シーズンの満足度はどうでしょう?
プジョル選手:以前にオメガファルマ・ロット(2011年在籍。現在のロットスーダルの前身チーム。)というチームにいたり、そのあともヨーロッパのプロチームにいて、そのころはポテンシャル的には一番高かった時期だった。でも、そのあとにちょっと病気をしてしまって、契約が続かなくて、インドネシアやアジアのチームに入った。そこのチームがまだ自転車競技を学んでいないチームで、足りないものが多いチームだったんだ。突然レースに招待されたりとか、カレンダーが見えないスケジュールで進行していて、いいコンディションが作れなかった。
現在、チーム右京では年間のスケジュールであったり、UCIの定期的なレースのオファーが受け取れる状態で、トレーニングのプランニングもコンディショニングもできるようになったということが、今僕がコンディションが上がっている証明になっている。ツアー・オブ・ジャパンとツール・ド・熊野で優勝して、その後もスペイン選手権が13位。この状況を見れば、オメガファルマにいた時代にかなり近づいているということだ。それはかなり嬉しいね。
CS:ジャパンカップでもトップでの争いに加わりましたが、世界との差はどう感じていますか?
プジョル選手:自分にとってジャパンカップは勝てたレースだった。でも、ラスト2周で自らアタックしたこのタイミングが間違いだった。次の周(最終周回)の上りでキャノンデール(・ドラパックのダヴィデ・ヴィッレッラ)がかけて、僕はその前の周での疲労を回復できないまま、追い付くのに脚を使う状態が続いてしまって結局スプリントでも敗れ、5位という結果になってしまった。世界との差というのは、勝つつもりだったから大してないだろう。ただ間違いを起こしてしまったというだけだから。
CS:Jプロツアーなどを闘っていくなかで、率直に日本人選手についてどう思いますか?
プジョル選手:実業団のレースも去年から参加して、選手たちの意識が僕らを倒すことに向いていて、それを目標にしてトレーニングしている選手が多いので、だんだん努力が実ってきているだろうと思う。日本の自転車の未来を考えれば、そんなに遠くない将来、日本人がスペイン人や他の外国から来た選手に対して、この間の増田選手のように(ツール・ド・北海道やJプロツアー最終戦の大分ロードレースなど)勝つようなシチュエーションは可能であると思う。
CS:来シーズン何を目指していますか?
プジョル選手:とりあえずまずは自分がチーム右京に所属できることを一番の目標にして来年も続けていくよ(笑)。それで、来年はUCIレースのなかでもアジアだけでなくヨーロッパへ、日本人のチームメイトも力に少しでも高い新たなステップに登りたい。