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ポッター総合優勝へ王手をかけるステージ2連勝! ツール・ド・とちぎ

レース
3月24日(土)、ツール・ド・とちぎの2日目は、小山市から日光市へと向かう約105kmのロードレース。中間スプリントポイントが立て続けに2カ所設定されたコース中盤以降に3人の逃げが形成され、先頭でKOMを通過したシマノレーシングの湊諒が山岳ジャージを手にした。集団では終盤の上りでペースアップが図られ、9人が抜け出す形に。その9人の中にしっかりと入った総合トップの証であるグリーンジャージを着るマイケル・ポッターが初日のTTに引き続き、スプリント勝負でステージ2勝目を挙げ、総合優勝に向けて大手をかけた。



text:滝沢佳奈子
photo:©2018TdT/滝沢佳奈子
 

スプリントポイントも逃さない鉄壁の走り

3賞ジャージを着る選手たちがスタートラインの先頭に並ぶ
3賞ジャージを着る選手たちがスタートラインの先頭に並ぶ
スプリントポイントを1位通過するトビー・オーチャード
スプリントポイントを1位通過するトビー・オーチャード
3月24日(土)、ツール・ド・とちぎの2日目の朝を迎えた。2日目は、小山市にある小山思いの森をスタートし、日光市の日光だいや川公園をゴールとする105.2kmの短いラインレースだ。約33km地点と約43km地点に中間スプリントポイント、約86km地点にKOM(山岳ポイント)が設定された。

初日に設定されたジャージを総取りしたオーストラリアン・サイクリング・アカデミー・ライド・サンシャイン・コーストのマイケル・ポッターはリラックスした表情でスタート地点に並んだ。新人賞のホワイトジャージは繰り下げで同チームのトビー・オーチャードが、ポイント賞のブルージャージも繰り下げで宇都宮ブリッツェンの増田成幸が着用した。

10時にスタートを切ると、日本大学や鹿屋体育大学など学生の選手たちを中心に、アタックが頻発。日大のエースである草場敬吾は、「自分らは特に個人総合がかかっているわけではないので、経験という意味で、ガンガン積極的に動いて逃げに乗るか、自分がきっかけで(逃げを)作れればいいかなと。上りで総合狙いが仕掛けてくるのは分かっていて、そこに食らいつくのは多分厳しいので、そこまでで積極的に走れればという気持ちで今日は走りました」と振り返る。


しかし、中間スプリントポイントではポイントと同時に、1位通過で3秒、2位通過で2秒、3位通過で1秒のボーナスタイムも獲得できる。初日のタイムトライアルを終えて、秒差がかなり詰まっており、たった3秒でも総合でジャンプアップする可能性があるため、ほとんどのチームが逃げを許容するわけにはいかなかった。

1回目のスプリントポイントでは、ラインの直前にチーム右京のスプリンター、レイモンド・クレダーが落車してしまう。先頭をしっかりと位置どったオーチャード、ポッター、岡篤志(宇都宮ブリッツェン)という順でスプリントラインを通過した。10km先の2回目のスプリントポイントでは、またしてもオーチャードが先頭通過、LXサイクリング・チームのパク・サンフン、リュブリャナ・グスト・ザウラムのベンジャミン・ヒルが後に続いた。

着実にスプリントポイントのボーナスタイムを消しに行ったオーストラリアン・サイクリングは、「作戦として、トビーがスプリントポイントを1位で通過して、後ろにつけた僕が2番目で通過するつもりだった。1回目のスプリントポイントはそのように、トビーが1位、僕が2位で通過した。2回目のスプリントもトビーが取った。今とても調子がいい状態できているので、明日のレースにつながればいいね」とポイント賞もトップであるポッターが語った。
 

ブリッツェンが上りで仕掛けるが、リーダーのちからはその上だった

スプリントポイントを終えた集団から抜け出すタイミングを図る先頭
スプリントポイントを終えた集団から抜け出すタイミングを図る先頭
上りまで、小嶋健太(真ん中)、湊諒(右)、安原大貴(左)の3人の逃げに
上りまで、小嶋健太(真ん中)、湊諒(右)、安原大貴(左)の3人の逃げに
山岳賞を獲得した湊
山岳賞を獲得した湊
スプリントポイントを通過すると、ようやく集団が落ち着きを見せ始めた。逃げにメンバーを乗せたいチームが集団先頭で様子を伺う。「結構アタックアタックでペースが速くて、一度一気に緩んだときがあったので、一か八か脚攣ってもいいからという思いで飛び出したら(逃げが)決まりました」と話すマトリックスパワータグの安原大貴とシマノレーシングチームの湊諒、日本大学の小嶋健太の3人の逃げグループが形成された。集団はオーストラリアン・サイクリングがコントロールに入った。

この3人の逃げは均等に先頭交代をしながら、KOMの麓まで進んでいった。小嶋が上りに入って、逃げグループから後退すると、安原と湊の山岳賞争いに。湊が仕掛け、KOMポイントを1位で通過後、後ろに迫った集団に二人はパスされた。

「今日の展開として、シマノレーシングは総合から50秒ほど遅れている僕を含む3選手が勝ちを狙ったり、総合のジャンプアップを狙うつもりで最初からアタックを繰り返していました。僕が乗った逃げが決まって、逃げきれなかったですけど、その過程でこの山岳賞が獲れたので、結果的に良かったです。明日からは自身の山岳賞を守りつつ、またKOMを狙っていければと思います」

と湊が振り返った。

一方、集団では上りに入る麓を前に地の利を生かした総攻撃を宇都宮ブリッツェンが仕掛ける。タイムトライアルの結果を見ても、上位勢に全てのメンバーを揃えるブリッツェンが一番攻撃をしやすく、コースプロフィールもわかりきっている上で、仕掛けないはずがなかった。そのときの状況について、チーム右京の畑中勇介はこう話す。

「ブリッツェンは絶対組織的に来るって分かってたんですけど、ちょっと対応が遅れちゃいましたね。他のチームは上り始めにまだ迷ってたんですよ。どこが上り始めかとか、場所とか、チームでどれくらいやろうかということだったりとか、あのチームだけはしっかりやってきた。うちのチームも、脚力ある選手はそれに脚だけで対応できたんですけど、僕や他のチームの選手でもそこでミスした選手はいたと思いますね。」

上り始めでブリッツェンの小野寺玲が全力のペースアップを始めると集団は長い一列の棒状になった。ブリッツェン清水裕輔監督の読みはほぼ思い通りとなった。3つのジャージを手にする一人の力量を除いては。

「山岳賞があるところで攻撃して、さらにそのあとの2回上ることも、下りがテクニカルなことも知っていたので、増田、(鈴木)譲、雨澤毅明、岡を残す作戦でした。そこからもう一回攻撃を仕掛けようかと思ったんですけども、雨澤と岡は(オーバーランで)コースアウトしちゃって、離脱してしまって。それで、譲と増田だけになって、それでも十分闘えると思ったんですけど、思った以上にリーダーが強いですし、あとチーム右京も人数をそろえて、上りのペースをガンガン上げていった。上りで抜け出して、下りでアドバンテージ生かして逃げ切ることも考えてたんですけど、そういう隙も与えてくれなかった状況ですね」

と清水監督は話した。

ブリッツェンの攻撃をきっかけにし、リーダーとチーム右京の動きで集団は完全に分断され、人数が絞られた。残り3kmの時点で先頭は、オーストラリアン・サイクリングがリーダーのポッターとフレディ・オヴェットの2人、ブリッツェンが増田、鈴木譲の2人、チーム右京がスプリントポイントで落車したクレダーとロビー・ハッカー、ベンジャミ・プラデスの3人、シマノレーシングからは入部正太朗、マトリックスからは土井雪広の合計9人だ。後続とのタイム差も40秒まで開き、ステージ争いはこの9人に絞られた。

最後の直線、誰が出てくるか。スプリンターに軍配が上がるだろうという予想は、圧倒的な力の前にねじ伏せられた。

「とにかく優勝ということよりもなるべくタイム差をつけたいということで、早くアタックをした。有利に持っていきたいという理由から早く仕掛けた」

そう話したのは、総合トップにいるポッターだった。9人になってから自身も積極的にローテーションに加わりながら、最後の直線ではチームメイトのオヴェットが引く。ラスト300mのところで早くも発射したポッターは追いすがるクレダーと鈴木譲を振り切ってスプリント勝負さえ勝ち取ってしまった。

3位に入った鈴木譲は、

「序盤のアシストという感じで動いていたので、KOMまで残れたらいいかなくらいの気持ちだったんですけど、下りで追いついたので。自分は雨澤選手に引いてもらって追いついたんですけど、その雨澤選手が岡選手と一緒にオーバーランしちゃって、自分だけ一人で追いついたんです。増田選手一人で前に行っていて、増田選手一人だとスプリントに加われないので、そこで一回切り替えて増田選手に先頭回ってもらいました。自分はちょっと脚溜めながら走って、ギリギリ3位に入れたって感じですね。結構番手も悪かったので、リーダー強かったんですけど、もうちょっと番手でいいところにいればって感じでしたね」

と話した。

 
チームの位置取りのためにKOMの上りの前から小野寺玲が集団コントロールに加わる
チームの位置取りのためにKOMの上りの前から小野寺玲が集団コントロールに加わる
ペースアップについていった9人は脚のある実力者だけだった
ペースアップについていった9人は脚のある実力者だけだった
早駆けしたマイケル・ポッターがスプリント勝負をものにした
早駆けしたマイケル・ポッターがスプリント勝負をものにした

UCIポイント獲得だけでない”捨て身”の走りに期待

ステージトップ3の選手たちが表彰台に上がる
ステージトップ3の選手たちが表彰台に上がる
明日で最終日、マイケル・ポッターが3連勝で総合優勝ということも十分あり得るのではないだろうか
明日で最終日、マイケル・ポッターが3連勝で総合優勝ということも十分あり得るのではないだろうか
ブリッツェン渾身の総攻撃だったにもかかわらず、レース後のインタビューでポッターは、

「今日の上りはそんなにハードに感じなかったね。チーム右京のロビー・ハッカーと協力し合いながらスピードを上げていったんだけど、今日は不思議ときつさを感じない上りだったよ」

と余裕。この発言に同じ場にいた鈴木譲もさすがに驚いている様子であった。

「僕らも脚なかったっていうのはあるけど……、これちぎるの難しいなと思いましたね。まぁまぁ速かったぞ、と。実際15人くらいに絞られたんで……。リーダーの力が予想以上にある。上り(の攻撃)も今日一人で潰してたので。これはもう展開で逆転狙うしかないなと思いましたね。」

2日目が終わっても3つのジャージをキープし続けたポッターの強さはかなり印象的だが、オーストラリアン・サイクリングの他メンバーの真価をまだ見られていないように感じる。2日目の小集団スプリントでは、スプリンターでないポッターが勝ち切った。そのポッターが、「チームにはスプリンターがいる」と言うのだから、最終日、集団スプリント勝負に持ち込まれたひとたまりもないだろう。

日本では貴重なUCIレースということもあって、日本人のUCIポイントの獲得はもちろん大事だが、勝手を言うなれば今の順位や他メンバーのステージ成績など全てを捨てでも総合優勝に賭ける姿勢を見てみたいものだ。どこかに突破口はまだあるはずだ。

最終日は、那須町にある那須町スポーツセンターをスタートして真岡市の井頭公園にゴールする146.6kmのコース。前半はほぼ下り基調で、スピードが上がるだろう。中盤に2つの山岳ポイントを通過し、そのあとはほとんど平坦だ。このままオーストラリアン・サイクリングが圧倒的な力の差を見せ付けることになるのか、それとも他の選手の番狂わせが起こるのか、注目だ。




●第2ステージ リザルト

1位 マイケル・ポッター(オーストラリアン・サイクリング・アカデミー・ライド・サンシャイン・コースト) 2時間21分27秒
2位 レイモンド・クレダー(チーム右京) +0秒
3位 鈴木譲(宇都宮ブリッツェン) +0秒
4位 入部正太朗(シマノレーシングチーム) +0秒
5位 ロビー・ハッカー(チーム右京) +0秒
6位 増田成幸(宇都宮ブリッツェン) +0秒
7位 フィレディ・オヴェット(オーストラリアン・サイクリング・アカデミー・ライド・サンシャイン・コースト) +3秒
8位 土井雪広(マトリックスパワータグ) +5秒
9位 ベンジャミ・プラデス・レヴェルテル(チーム右京) +5秒
10位 武山晃輔(日本大学) +39秒


●個人総合成績(グリーンジャージ)

1位 マイケル・ポッター(オーストラリアン・サイクリング・アカデミー・ライド・サンシャイン・コースト) 2時間30分10秒
2位 増田成幸(宇都宮ブリッツェン) +22秒
3位 レイモンド・クレダー(チーム右京) +24秒
4位 ロビー・ハッカー(チーム右京) +32秒
5位 入部正太朗(シマノレーシングチーム) +36秒


●ポイント賞(ブルージャージ)

マイケル・ポッター(オーストラリアン・サイクリング・アカデミー・ライド・サンシャイン・コースト) 38pt


●山岳賞(レッドジャージ)

湊諒(シマノレーシングチーム) 5pt


●U23総合成績(ホワイトジャージ)

マイケル・ポッター(オーストラリアン・サイクリング・アカデミー・ライド・サンシャイン・コースト)


●チーム総合

チーム右京


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