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ウィリエール・トリエスティーナ2014年モデルを独占取材!

イタリアのスポーツバイクブランドのなかでも、一、二を争う歴史の長さを誇るウィリエール・トリエスティーナ。 その2014年モデル発表会が2013年6月、各国のメディアや代理店を招いて開催された。 今回発表されたのはフラッグシップモデルとして、エアロロードの「チェントウノエアー」。 そしてミドルレンジの「グランツーリズモレボリューション」だ。

 

text:中島丈博 photo:Keisuke 'kitto' KITAMURA、Takehiro NAKAJIMA

空力をより突き詰めた「チェントウノエアー」デビュー!

ウィリエール100周年に登場したフラッグシップモデルから、代々使われている「チェント」という言葉、イタリア語で100を意味するこの言葉を与えられた6番目のモデルが「チェントウノエアー」。その名のとおりエアロダイナミクスを意識したバイクだ。「2013年モデルのチェントウノSRが持つバランスのよさとTTバイクのツインブレードで培われたエアロダイナミクスを一台のバイクに集約し誕生した」と発表会で紹介された。

 

フォークブレード、ダウンチューブ、シートチューブ、シートステー、シートポストの各部は「カムテールデザイン」という翼断面形状の後端を切り落としたような形状を採用。ヘッドチューブについても、UCIルールに抵触しないぎりぎりまで前後の長さを延ばしている。そこだけ見れば、まるでTTバイクのようだ。ベアリング径は下ワンに1-1/4インチ径を採用。1-1/2インチ径を採用するよりも軽さと剛性のバランスが優れているからだ。シートポストはリッチーと共同開発したもの。

 

フォークは一段と凝った作りになっている。ブレードだけでなく、フォーククラウン下部を通る空気をダウンチューブに向けて整流するように、小さなフィンが設けられている。

 

フレームに使用されているカーボンのグレードは、チェントウノSRと同じく60Tグレード&ナノテクノロジーのZnOレジンを採用。その配合はチェントウノエアーのために変更されている。

 

BBにはウィリエールが各社に先がけてさいようした規格「BB386エボ」を搭載。高いパワーの伝達効率と耐久性を備えている。

 

ケーブルルーティングも特徴的。ダウンチューブの上側からシフトケーブルがフレーム内に入っていくのだが、ケーブルアジャスターを備えた大型のアウター受けを持つ。これはエアロ効果を狙っていると同時に、取り外すとフレームに大きな開口部ができることで、電動コンポーネントのワイヤを内蔵する作業効率を高めているのだ。リヤエンドも、アウターワイヤ受けと一体となることでスムーズなワイヤルートを確保できるようになっている。

 

シートステーは低い位置でフレームに取り付けられている。コンパクトなリヤ三角だ。フレーム形状と相まって、空気抵抗の低減に貢献している。

 

フレームのフォルムを崩さないスマートなシートクランプは、一見するとシンプルなバンドタイプに見えるが、じつは二重構造になっている。外から見えるバンド部の下にもうひとつ「斜ウス」を備えたストッパーが隠れているのだ。どちらか片方だと固定力が不足したり、締めすぎによるフレームの破損につながってしまう。カーボンフレームではトラブルになりやすい場所なので、この構造は安心感につながる。

 

大胆なエアロフォルムを取り入れつつ、BBやシートクランプ、ワイヤルートなど、ポイントには信頼性の高い構造を採用している バランスよく設計されたバイク。それが「チェントウノエアー」だ。

 

■インテグレーテッドエアロフォーク股の部分はシンプルなアーチではなくダウンチューブにつながるようにフィンが設けられている。これにより、空気の整流効果をアップさせているのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

■ウィリエールがまず取り入れた先進の規格BB386エボを搭載する。BBまわりもエアロダイナミクスを意識した形状。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■スマートなワイヤリングを可能にするリヤディレーラーハンガー。

 

■独創的かつ確実な固定を可能にするシートクランプ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■TTバイクのようなヘッドチューブ。下ワンベアリングは1-1/4インチ径。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■ダウンチューブのワイヤ入り口。電動コンポーネント用のパーツも用意される。

CYCLE SPORTS .jp ナカジ編集長の試乗レポート

ダークブルーのフレームにホワイトのラインがあしらわれたカラーリング。ちょっと今までのロードバイクにない色遣いだ。「ガンガンレースをしてやるぜ!」というよりはシックで落ち着きある雰囲気を持たせている。フレームはカチカチに固く仕上がっているのではなく、ある程度しなりをもたせてある。しかし、振動を受けてから、いつまでもぶるぶる震えているような収まりの悪さはない。ゆえに安定しているので、ちょっと大げさかもしれないが、何も考えないで突っ走っても大丈夫という安心感を得られる。

 

一番小さいサイズであるXSに試乗した。このサイズだと懸念されるのが、ハンドリングの「ばたつき」である。ヘッド角とフォークオフセット、ブレードの形状のバランスによって、ハンドリングのスムーズさが失われることがあるが、チェントウノエアーはそれが非常に少なかった。ウィリエールの社長兄弟が、みんな小柄だからだろうか?身長が165cm以下ならXSを選ぶことになるので、日本人にとってはありがたい。

 

空力性能については正直わかりづらい。でもフレーム形状はすべてがカムテールデザインになっており、フォーククラウン下部に整流フィンが設けられているなど凝ったデザインはそれだけで所有欲をかき立てられる!

 

シートクランプの二重構造は、非常に期待できると思う。フレームもシートポストもフルカーボンになってから、固定力に問題のあるフレームが少なからず存在する。バンドタイプと斜ウスタイプの合わせワザなら、多少重量はかさむが試乗中もサドル高がずれてしまう不安はなかった。ただ、ちょっと固着しやすいのか、各国のディストリビューターもサドル高調整には手間どっていた。

 

もちろん各社の電動コンポーネントとの互換性を確保してある。ダウンチューブのストッパーやリヤエンドの作りは個性的で、デザインと機能が両立されたすばらしい形状だ。

 

時速40km後半から集団が中切れ、そこで踏み直して集団をつなぐという状況では、いったんバイクがしなってからじわじわ加速するので一瞬遅れが気になる。でも、自分の脚力でもしっかりスピードは伸びていくので「このしなりのリズムを好きかどうか?」がバイク選びのポイントのひとつだ。自分の体重(61kg)であれば、ロードレースで使ってもロングライドに出かけても、その性能の恩恵を受けられると感じた。一定ペースで長距離を走るのもいいだろう。エアロダイナミクスの効果も出るはずだ。

 

いかにもエアロロード!というオーラをまとったルックスも、好きな人にはたまらない。それでいて走りにクセがないのがポイントだ。長くつきあうなら個性とバランスのよさが重要。

 

ウィリエール・チェントウノエアー

フレーム価格:42万円

シマノ・デュラエース 完成車価格:76万2300円

※2013年10月発売予定

 

フレーム:60T カーボン

フォーク:60T カーボン

コンポーネント:シマノ・デュラエース9000

ホイール:シマノ・WH-9000-C35-CL

タイヤ:ヴィットリア・オープンコルサCX 700×23C

ハンドルバー:リッチー・WCSカーブ

ステム:リッチー・WCS 4-AXIS

サドル:プロロゴ・スクラッチプロ

シートポスト:リッチー・スーパーロジック チェントウノエアーカスタム

フレームセット重量:1480g(Mサイズ)

サイズ:XS、S、M、L、XL

カラー:ブラック×レッド、ダーク、ネイビー

 

中堅機種がブラッシュアップ! グランツーリズモレボリューション

ウィリエール2014年モデル、もうひとつのトピックスがグランツーリズモレボリューションの登場。すでに同社のミドルレンジモデルにあったグランツーリズモをブラッシュアップさせたモデルとなる。

 

おもな進化のポイントは4つ。

ヘッドチューブの上下異径化、フロントフォーク、シートチューブ、ケーブルルーティングだ。

 

ヘッドチューブのベアリングは、チェントウノエアー同様に下ワン1-1/4インチを採用。フォークはよりエアロダイナミクス性能を向上させた形状に変更されている。また重量も軽くなっている。

 

シートチューブは、グランツーリズモではセミインテグレーテッドタイプだったが、サドル高調節範囲の狭さがネガとしてあった。それを解決し、汎用性が向上している。シフト、ブレーキともワイヤ類はすべてフレームに内蔵される。メンテナンス性を上げるために、アウターストッパーの形状を変更。開口部が大きくなっている。もちろん機械式と電動コンポーネントの両方に対応。

 

カラーリングはブラック×レッドを基調としたデザインから、ライムグリーンなどポップな色遣いや、今年ウィリエールがスポンサードしているチームコロンビアカラーが用意されている。

 

中堅機種としてそつのないパッケージにまとまっている。走りはいたってニュートラルだ。チェントウノエアーと比べてしまうと、やはり重量が気になってしまうところ。だが、どっしりと安定しているともいえる。

 

軽量高剛性なフラッグシップモデルたちは、レースでの使用を前提とされているので、加速やハンドリングなどがクイックになるよう設計されている。しかし、ロングライドイベントやツーリングなど、そこまで俊敏な味付けを必要としないシーンで使用するなら、むしろ穏やかな動きをするフレームのほうがいい。多少雑に扱っても大丈夫そうな、頑丈さを感じるところも、またしかり。

 

細かい路面の凹凸から大きなギャップまで、ロードインフォメーションは素直にライダーに伝わってくる。今までのグランツーリズモの弱点を解決したと考えればお得なモデルだ。

 

■ダウンチューブと同じくらいのボリュームがあるトップチューブ。走った感じもがっしりしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

■すべてのワイヤ類はフレームに内蔵される。すっきりした見た目は価格以上のもの。

 

 

 

 

 

 

 

 

■ヘッドパーツのベアリング径は下ワンが1-1/4インチの上下異径。上位モデルと同じ規格だ。

 

ウィリエール・グランツーリズモレボリューション

フレーム価格:23万1000円

シマノ・アルテグラ 完成車価格:31万5000円

※2013年8月発売予定

 

フレーム:カーボン

フォーク:カーボン

コンポーネント:シマノ・アルテグラ 6800

ホイール:シマノ・WH-RS11

タイヤ:ヴィットリア・トパジオ 700×23C

ハンドルバー:リッチー・WCSカーブ

ステム:リッチー・WCS 4-AXIS

サドル:プロロゴ・スクラッチプロ

シートポスト:リッチー・プロカーボン

フレームセット重量:1510g(Mサイズ)

サイズ:XS、S、M、L、XL

カラー:ブラック×レッド、ライム×イエロー、トリコロール

 

 

ウィリエール本社探訪レポートは、サイクルスポーツ9月号でチェック!

 

 

 

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服部産業
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