トピックス

全日本選手権ロード・男子エリートは初山翔が優勝!ブリヂストンアンカーが完全勝利

伊豆大島で開催された第85回全日本自転車競技選手権大会ロード・レース。大会最終日の6月26日(日)は男子エリートが日本一の座を争った。ラスト1周で抜け出して、小集団スプリントを制したのはブリヂストンアンカーサイクリングチームの初山翔だった。

 
text&photo 滝沢佳奈子

ブリヂストンアンカーがチーム力を見せつけた!

エース・内間を失った後もチーム全員で圧倒的な力を見せつけたブリヂストンアンカー。最高の笑顔!
エース・内間を失った後もチーム全員で圧倒的な力を見せつけたブリヂストンアンカー。最高の笑顔!


6月26日(日)朝、前日からの強風はまだ吹き続いていたが、雲の隙間から青空が垣間見え、雨が降ることはなさそうな空模様であった。スタートの10分ほど前になると、125名の選手たちがスタートラインに並ぶ。リラックスした表情で談笑する選手、真剣な表情で自分の世界に集中している選手とそれぞれが思い思いの方法でスタートが切られる瞬間を待っていた。

昨年上位した選手たちが前方に並び、紹介される。昨年の優勝者、NIPPO・ヴィーニファンティーニの窪木一茂が不在でのレースとなった。定刻通りの午前8時、全長154.7kmに及ぶ周回コース13周の戦いがいよいよ始まった。

レース序盤、アタックが繰り返され、選手たちに早くも疲労の色が見え始める。他のカテゴリーと同様、序盤から遅れ始めた選手がポロポロとレースを降ろされていった。3周目の上りに入り、宇都宮ブリッツェンの鈴木譲と愛三工業レーシングチームの中根英登が集団から抜け出し、そのタイム差をじわじわと広げていく。一方、愛三とブリッツェンが抑えに入った集団の人数はその時点で80人程度になった。

 
前年度ワンツーを決めたチーム右京の畑中勇介が紹介される
前年度ワンツーを決めたチーム右京の畑中勇介が紹介される
集団から抜け出した鈴木譲と中根英登
集団から抜け出した鈴木譲と中根英登


5周目に入って逃げグループとのタイム差は2分半ほどになり、集団をアンカーの椿大志、内間康平、井上和郎が牽引し始める。しかしその後、海岸線沿いに入ると、内間がマトリックスパワータグの選手とハスり、落車してしまう。凹凸の激しいアスファルトに右肘を激しく擦り剥き、そのまま救急車で運ばれて行ってしまった。(幸いにも骨などには異常はなくレース後の東京へ帰る船内では元気な様子であった。)

エースとしてこのレースに臨んだ内間をチームメイトの井上が待ち、それを集団が待つ形で逃げとの差は3分ほどまで広がった。集団に戻った井上は椿とともに先頭を引き、その後ろでは残った愛三とブリッツェンのメンバーが位置取る。 

 
5周回目、アンカーの椿、内間、井上が集団をコントロールし始める
5周回目、アンカーの椿、内間、井上が集団をコントロールし始める
集団はアンカー、ブリッツェン、愛三が前方を占める
集団はアンカー、ブリッツェン、愛三が前方を占める
落車した内間の自転車はこの状態
落車した内間の自転車はこの状態


同じ状態がしばらく続き、9周目に入ると、逃げと集団とのタイム差は1分40秒ほどに縮まる。9周目中盤に逃げグループから中根が脱落し、鈴木譲の一人逃げとなる。レース序盤のアタック合戦で疲労の色が伺えた集団のメンバーも回復できてきている様子であった。この時点でプロトンの人数は50数名まで絞られていた。

10周目の上りに入ったところで単独で逃げていた鈴木譲が集団に吸収される。この上りではマトリックスの佐野や西薗が積極的にペースを上げ、集団をふるい落としにかかる。アタックがかけられる度に小集団となるが、その後の下りで追いつかれるというのを繰り返し、多くの選手たちが消耗していった。

 
逃げグループから中根が脱落し、一人逃げとなる鈴木譲)
逃げグループから中根が脱落し、一人逃げとなる鈴木譲)
およそ50人程まで絞り込まれた集団
およそ50人程まで絞り込まれた集団
アンカーが集団をコントロールしている間、前から15番手ほどで脚を溜める初山と西園
アンカーが集団をコントロールしている間、前から15番手ほどで脚を溜める初山と西園
佐野や西薗が上りでペースを上げる。それについていけるのは有力勢のみ
佐野や西薗が上りでペースを上げる。それについていけるのは有力勢のみ


ペースが上がった状態で最終周回の上りを終え、下り切った残り7km地点でシマノレーシングの木村圭佑がアタックをかける。これにチェックに入ったのは初山のみ。この2人が追走集団から先行し、海岸線をローテーションしながら向かい風を切り抜けていく。NIPPOの石橋学が2人に追いつこうと踏むが、それを利用する形で西薗が単独で先頭に追いつくことに。この動きが決定打となった。3人で回り、残り1km時点での追走とのタイム差はおよそ30秒。逃げ切りがかなり濃厚となった。

先頭に西薗、2番手に木村、3番手に初山という並びで残り500mに入り、ラスト150m〜200mのところで数的劣勢にある木村がスプリントをかける。その木村を後ろからまくる形で、初山がスプリント。チームメイトである西薗とのスプリント勝負となった。ラスト数10m、初山と西薗が横に並んで踏み切るが、最後は西薗がチームメイトの勝利を確信し、先に手を上げる。ゴールラインを一番に切って雄叫びを上げたのは初山であった。

 
初山、西薗がワンツーフィニッシュを切る
初山、西薗がワンツーフィニッシュを切る

初山翔のコメント

全日本タイトルを獲った今の気持ちを聞かせてください。

初山:まだあんまり実感ないです。アンカーに入って、清水都貴選手みたいな偉大な、いつ全日本チャンピオンになってもおかしくないような選手の下で走ってて、この全日本選手権のプレッシャーっていうのをすごい都貴さんが受けてるのをすごい感じていて、そういうレースだっていうのを僕もわかっていたので、今日レース前すごい緊張していました。優勝っていう最高の結果を手にした今もまだ実感が湧いていなくて、チームメイトやスタッフが号泣して喜んでくれているのを見て、あ、勝ったんだっていう感じです。


レース前のチームの作戦はどういうものでしたか?

初山:最初は内間選手の独走優勝っていうのが第1の目標でした。彼もオリンピックがありますし、ここで弾みをつけてっていうのがあったんですけど、序盤で彼が落車してしまって、そしたらもう残っている選手で戦おうっていうことになって。幸いなことに僕らはチーム力がすごく厚くて勝てる選手がいっぱいいましたので、焦ることはありませんでした。スプリントに強い鈴木龍と独走力に強い西薗さんと、小集団のスプリントだったら僕もできるので、その3人をちゃんと前に残すという形を作り、井上選手と椿選手には集団の牽引をしてもらって、全員使ってワンツーという最高の成績を獲ることができました。


今後の目標は?

初山:とりあえず直近の目標を達成してしまったのですが.....まだまだこれからシーズン後半も大事なUCIレースもありますし、僕らが目標としているような(ツール・ド・)北海道、ジャパンカップ、ヨーロッパ遠征も予定されています。今年のシーズン前半のように、苦しいレースを強いられながらも着実に進んできたことでこの結果がついてきたと思いますので、今後もそれを続けていきたいです。

 
ブリヂストンアンカーの水谷監督も完全勝利に大喜び!
ブリヂストンアンカーの水谷監督も完全勝利に大喜び!


全日本選手権ロード・レース【男子エリート】154.7km
1位 初山翔(ブリヂストアンカーサイクリングチーム) 4時間14分57秒
2位 西薗良太(ブリヂストアンカーサイクリングチーム) ー
3位 木村圭佑(シマノレーシング) +2秒
4位 石橋学 (NIPPO-VINI FANTINI) +42秒
5位 増田成幸 (宇都宮ブリッツェン) +43秒
6位 鈴木龍 (ブリヂストンアンカーサイクリングチーム) +43秒
7位 野中竜馬 (キナンサイクリングチーム) +44秒
8位 平井栄一 (Team UKYO) +44秒
9位 土井雪広 (マトリックスパワータグ) +44秒
10位 山下貴宏 (シエルヴォ奈良MIYATA-MERIDAレーシングチーム) +44秒
http://nationalchampionships-road.com