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最終日のゴールまで勝敗がもつれ込んだ! パリ〜ニース 2016
2016.03.16
雪で第3ステージが途中キャンセル
今年で74回目となったフランスのパリ~ニース(UCIワールドツアー)は、パリ近郊をスタートして南下し、温暖な南仏のニースを目指すため、“太陽へ向かうレース”という愛称が付けられている。
しかし、今年は南へと向かう道程の途中で、凍てつく寒さと雪が選手たちの行く手を阻んだ。カテゴリー2のブルイイー山にゴールする第3ステージのスタートは冷たい雨だったが、次第に雪へと変わり、主催者は「安全を保証できない」として、97km地点でステージを中止にする決定を下した。
プロローグで優勝し、リーダージャージのマイヨ・ジョーヌを着ていたオーストラリアのマイケル・マシューズ(オリカ・グリーンエッジ)にとって、ブルイイー山を2度上る第3ステージは最初の試練になるはずだったのだが、雪のおかげで1日長く総合首位の座にとどまることができた。
序盤にプロバンスの巨人と呼ばれるモン・バントゥ中腹のシャレ・レナール峠(標高1440メートル)を越えた第5ステージでも、マシューズはメイン集団でゴールし、マイヨ・ジョーヌを着て今年のクイーンステージだった第6ステージのスタートラインに立つことができた。
勝負を決した第6ステージは、6ヶ所の峠を越えたあと、標高1165メートルでカテゴリー1のラ・マドンヌ・デュテル山頂にゴールするレイアウトだった。15.3km続く最後の登坂が始まった時、集団の先頭でレースをコントロールしていたのは英国のチームスカイだった。
その時点でマイヨ・ジョーヌのマシューズは、すでに集団から脱落していて、前日まで総合3位だったオランダのトム・ドゥムラン(チームジャイアント・アルペシン)がバーチャルリーダーになっていた。そしてチームスカイのエースであるゲラント・トーマス(チームスカイ)は、総合でドゥムランに5秒遅れだった。
しかし、最初に攻撃したのは、パリ〜ニースで2度総合優勝しているアルベルト・コンタドールを擁するティンコフだった。山頂のゴールまで残り10km地点で、ポーランド人クライマーのラファウ・マイカがアタックして先頭に飛び出し、その後方にはコンタドールの姿があった。
このアタックが戦闘開始の合図になり、先頭集団はあっという間に16人になってしまったが、トーマスはセルヒオ・エナオ(チームスカイ)とともに加わり、バーチャルリーダーのドゥムランも生き残っていた。そしてディフェンディングチャンピオンであるオーストラリアのリッチー・ポート(BMC)の姿もあった。
ゴールまで残り6km、ラ・マドンヌ・デュテルでもっとも勾配がキツい場所でマイカが最後の力を振り絞って加速した次の瞬間、コンタドールが満を持して飛び出した。しかし、彼自身がレース後に語っていたように、その登坂は彼の得意の独走が決まるほどキツいものではなかった。
エナオとトーマスは何とかコンタドールのアタックに付き従い、ポートとロシアのイルヌール・ザカリン(カチューシャ)も追いつき、先頭は5人になった。しかし、バーチャルリーダーのドゥムランは自分のペースで走り続け、ライバルたちを追おうとはしなかった。
頂上ゴールスプリントはトーマスが先行し、コンタドールは付いていくことができなかったが、ザカリンがフィニッシュラインでトーマスを差して区間優勝を奪い取った。トーマスは区間優勝を逃したが、ここで総合首位に立ち、マイヨ・ジョーヌを獲得することができたのだ。
ニースのゴールまでわからなかった勝者
最終ステージは6ヶ所の峠越えがあったが、ゴールはニースで平坦だった。マイヨ・ジョーヌを着たトーマスのアドバンテージは、コンタドールに15秒、ポートに21秒とわずかなものだった。
そしてコンタドールは、期待を裏切らない男だった。彼はゴールまでまだ50km近くあるペイユ峠で集団からアタックし、トーマスに50秒差を付けてしまった。チームスカイは下りで必死で追走し、コンタドールを吸収したが、まだゴールまでの道程にはエズ峠が残っていた。
最後のエズ峠の登坂で、コンタドールはふたたびアタック。マイヨ・ジョーヌのトーマスはまたもや付いて行けず、ポートだけが応戦できた。2人は逃げの残党だった若いティム・ワロンス(ロット・ソウダル)を吸収し、ニースのゴールを目指してエズ峠を下り続けた。
しかし、追い抜きを得意とするトーマスもあきらめなかった。彼はチームメートのエナオの助けを借りて、上りで失ったタイム差を、下りで徐々に取り戻していった。
そしてマイヨ・ジョーヌのトーマスは、ゴールスプリントでワロンスに負けて10秒のボーナスタイムを獲得できなかったコンタドールに、たった5秒差でゴールすることができ、辛くも総合首位の座を守ることができた。
「コンタドールがアタックしたとき、最初は落ち着いて対処したけれど、エズ峠では自分の脚が屈してしまったことを認める。僕は表彰台ですら無理だと思ったよ。でも下りでは、本当にエナオに感謝しなければならない。このマイヨ・ジョーヌは彼のものでもあるよ」と、トーマスは最終日を振り返った。
「素晴らしいよ。明らかに僕のキャリアで最高の勝利だ。最高のステージレーサーであるコンタドールに勝てて、去年は参加したほとんどのレースで勝ったポートに勝てるなんて、まったく信じられない」トーマスの勝利で、英国のチームスカイはフランスのパリ〜ニースを5年間で4度制したことになった。
一方、最終日の逆転優勝を成功させられなかったコンタドールは「僕は別の結果を望んでいた。2位は好きじゃない。失ったタイムを取り返すために出来る限りのことをして、最後はほとんど勝っていた。成功はしなかったが、素晴らしいショーを演じられたと確信している。何はともあれ、トーマスはうまくやったし、とても強力なチームも持っていた。でも、打ち負かすことはできたはずだ」と、語っていた。
第74回パリ~ニース結果
1 ゲラント・トーマス(チームスカイ/英国)27時間26分40秒
2 アルベルト・コンタドール(ティンコフ/スペイン)+4秒
3 リッチー・ポート(BMC/オーストラリア)+12秒
4 イルヌール・ザカリン(カチューシャ/ロシア)+20秒
5 ヨン・イサギレ(モビスター/スペイン)+37秒
6 セルヒオ・エナオ(チームスカイ/コロンビア)+44秒
7 サイモン・イエーツ(オリカ・グリーンエッジ/英国)+44秒
8 トニ・ガロパン(ロット・ソウダル/フランス)+51秒
9 ロマン・バルデ(AG2R・ラモンディアル/フランス)+1分00秒
10 ルイ・コスタ(ランプレ・メリダ/ポルトガル)+1分07秒
(http://www.letour.fr/paris-nice/2016/us/)
別府史之インタビュー
第74回パリ〜ニースは2013年以来3度目の出場。 無事に完走を果たした別府史之(トレック・セガフレード/日本)をフィニッシュ直後のチームバス前でインタビューした。
CS:3回目のパリニースを走り終えての感想は?
別府:第3ステージ、地元のコースで大雪が降ってキャンセルになってしまった。第5ステージ、モン・バントゥ中腹のシャレ・レナール峠へのステージは調子を崩していたんですが、昨日の第6ステージではリカバリーして、最終日は前には残れなかったけど、いい位置でレースができた。春のクラシックに向けていいトレーニング、イメージが持てました。
フランク・シュレクが落車でリタイアしてしまったのは残念ですね。第2ステージでニッコロ・ボニファッツィオが、第4ステージでエドワルド・トゥンスがそれぞれステージ2位に入って、そのための仕事をずっとしていました。
ボジョレーステージの次、第4ステージ狙ってた。逃げて、いいポジションで逃げ切りたいと思っていた。でもうまくはまらなかった。まあ、でも手ごたえはありました。
CS:今年、これからの目標は?
別府:春先のクラシックと、ツール・ド・フランスのセレクションに残ることを狙っています。
CS:前日に初開催の市民サイクリングイベントがあったのですが、一般ライダーがこのコースを走るうえで気をつけておきたいことは?
別府:まずは景色が最高! ただ、アップダウンがきついですね。なかなか気楽に走れるコースじゃないけど、南仏のオリーブの木とか勾配のいい感じとか、天気のよさも味わえる。そんないいコースです。ただ、下りがすごくトリッキーなので気をつけて。空気圧とタイヤ選びは大切ですね。
CS:チームメイトではホイールにアイオロス5(50mmハイトリム)を選んでいる人もいますが、別府選手はアイオロス3なんですね。理由は?
別府:このホイールは回りも軽いし、クッション性が高いので荒れた路面でも跳ねなくて乗り味がいいですね。それで選択しました。
別府史之オフィシャルサイト:http://www.fumy.jp/
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